2024年12月23日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2014年3月28日

 一方、「アラブの春」やシェール革命による経済不安に加え、イランの核開発問題を抱えた中東では、地政学リスクが増している。そんななか、中国は積極的に資源確保に乗り出している。アジア太平洋地域へ軍事・外交の重心を移す米国の「リバランス政策」ともあわせ、シェール革命は「風が吹けば桶屋が儲かる」式に、日本の安全保障政策のあり方にも波紋を広げているといえそうだ。

日本は波にうまく乗れるのか

 シェール革命を契機に国際情勢がガラガラと音を立てて変わりつつあるなか、日本だけが、東日本大震災と福島事故以降のエネルギー政策の混乱から抜け出せずにいる。まるで時が止まったかのようだ。

 世界の動きに遅れをとるどころか、準国産エネルギーである原子力発電の再稼動もままならず、「アジアプレミアム」と呼ばれる割高な価格でLNGを大量に輸入している。海外への燃料費の流出は、原子力発電所代替分だけで年間3兆6000億円に上る。

 著者はこうした状況を憂え、「日本で高まる期待と現実」「日本の針路」という最後の二章を割いて、日本のエネルギー政策のあり方を説く。

 このまま電力の供給不安と電気料金の上昇が続けば、「アベノミクスの第3の矢である成長戦略にとって障害になりかねません。産業の空洞化がさらに進み、雇用が失われる」と懸念をあらわにしている。

 <その一方で、シェール革命は米国の産業競争力を回復させるのに大いに貢献しています。特に安い原料を使えるようになった石油化学産業は、飛躍的に国際競争力を高めています。すべてのもの作りに必要不可欠なエネルギーと石油化学原料が安く供給できるようになり、米国製造業の生産コストが大幅に下がっています。EUはこれに強い危機感を持っていますが、日本も同じ状況だと認識すべきだと思います。>

 <現在の日本にとって、電力不足を改善し電気料金の上昇を抑え、成長戦略を支えることができる即効性のある対策は、LNG価格フォーミュラの見直しとともに、安全が確認された原子力発電所を再稼動させることです。>


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