もう一つ気になるのは、日本企業の意識の問題。激しい低価格志向の中で、「安ければいい」と中国での生産管理をすっ飛ばす日本企業がやっぱり出てきているように思えます。たとえば、合成抗菌剤マラカイトグリーンを高濃度に含む中国産ウナギ蒲焼きが昨年2月、さいたま市で保健所によって見つけられました。検出限界(0.002ppm)未満でなければいけないのに、4.7ppm。中央区でも違反品が見つかりました。両方、同じ業者が輸入したものでした。
マラカイトグリーンは2005年ごろ、中国産から相次いで検出されて厚労省は、輸入届出ごとに検査を行い、検出限界未満であることを確認しないと輸入させない方式をとっています。日本の業者で作っている「日本鰻輸入組合」も、中国側に指導しており、このところ違反はゼロにはならないものの、落ち着いていました。しかし、4.7ppmの輸入業者は新しい会社で、組合には入っておらず、輸入状況も不自然だったと当時、同業他社は指摘しています。この輸入ロットは品質が悪かったためにあまり売れず、在庫を積み上げていたとか。違反が判明してさらに返品の山となり、残っていた全量が中国に帰ったそうです。
つまり、悪質な中国業者と悪質な日本業者が結託すれば、本当に問題のある食品が入ってきます。それは、医薬品成分を含有している中国製健康食品が、あやしい店やウェブサイトで売られ、厚労省等がたびたび注意喚起している状況を見ても、明らかでしょう。
今後も感情的な中国たたきが続けば、どこかでモラルハザードが拡大してしまうのではないか。日本の輸入関係者の心が折れてしまうのではないか。そうなった時がたぶん、本当の日本の危機です。
ちょうど原稿を書き終えた頃、中国政府が「日本に輸出した鶏肉に期限切れのものは入っていない」と、日本側に説明している、というニュースが伝えられました(8月5日付朝日新聞)。厚労省もその内容を公表しました。中国側が、うるさい日本向けには日本仕様の食品を製造していた可能性はおおいにあります。
でも、中国はイヤ? いや、日本仕様なら食べる?
どちらを選択するかは、あなた次第。日本の食の状況は複雑です。複雑なことを複雑なまま受け止めて、対処したい。あまりにも安すぎる食品は警戒し、きちんと情報が公開され生産や管理が行われている食品は、冷静に食べ、でも、他国にそれほど依存せずにすむ食料生産や食べ方を考えて行きたい。私はそう考えます。
<参考文献>
・日本マクドナルド・チキンマックナゲットおよび、チキン商品に関するメッセージ
http://www.mcdonalds.co.jp/news/release_list.html
・ファミリーマート「上海福喜食品有限公司」に関する報道につきまして
http://www.family.co.jp/company/news_releases/2014/140722_03.pdf
・朝日新聞ニュース特集・牛ミンチ偽装
http://www.asahi.com/special/070627/
・厚労省・輸入食品業務
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index.html
・輸入冷凍野菜品質安全協議会
http://www.tosaikyo.jp
・日本冷凍食品協会
http://www.reishokukyo.or.jp
・日本鰻輸入組合
http://www.unagi-ia.jp
・厚労省・日中食品安全推進イニシアチブに基づく実務者レベル協議の概要について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000053201.html
・FOOCOM.NET“中国猛毒食品”のトリック(上)
http://www.foocom.net/column/editor/8925/
・FOOCOM.NET“中国猛毒食品”のトリック(下)
http://www.foocom.net/column/editor/8959/
・FOOCOM.NET 中国産、気になる三つの違反事例
http://www.foocom.net/column/editor/9076/
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