2026年9月24日(木)

トランプ2.0

2026年9月24日

2つの標的:「気まぐれな無党派層」と「若者」

テキサス州の「ローンスター(Lone Star):ひとつ星」がプリントされたペットボトル(オースティン、筆者撮影)

 米中間選挙や米大統領選挙のたびに、日本では無党派層の票の獲得が選挙の勝敗の鍵を握ると言われる。無党派層と一言で言ってしまうが、今回の米中間選挙で全米の注目を浴びるテキサス州では、民主党はどのような無党派層をターゲットにしているのか。

 ベルトラン-ガルシアがこう説明してくれた。

「ターゲットは無党派層でたまにしか投票に行かない有権者です」

 2008年と12年米大統領選挙において、研究の一環として南部バージニア州のオバマ選挙対策事務所に入ったとき、同陣営が無党派層で「気まぐれな」有権者をターゲットにしていたことを思い出した。気まぐれな有権者とは、投票に行ったり行かなかったりする有権者を指す。彼らに対して、戸別訪問等で投票を促し、投票所に出向かせることで票の上積みができるとオバマ陣営はみていた。そして、それは的中した。現在のテキサス州民主党も同様の考え方をしている。

 さらに、ベルトラン-ガルシアは筆者と東部ニュージャージー州から応援に駆け付けた白人女性に対してこう指示を出した。

「若者が住むアパートに行き、有権者登録用紙を配ってください」

 もう1つのターゲットは、若者なのだ。まず、若者に有権者登録をさせ、彼らの票を獲得しなければならない。

 周知の通り、米国では投票する前にあらかじめ州の選挙管理事務所や車両管理局(DMV)で、名前や住所などを登録しなければならない。多くの州では共和党か民主党などの支持政党の名前も登録し、支持政党がない場合は無党派を選択できる。

 米国においては多数の州でオンラインによる有権者登録を導入しているが、テキサス州は例外で、新規の有権者登録をオンラインで完結させることができない。紙の用紙に記入し、手書きの署名をして郡の選挙管理事務所に郵送ないし直接届けなければならない。

有権者登録用紙の配布

玄関のドアノブにぶら下げた有権者登録用紙(オースティン、筆者撮影)

 9月2日、最高気温摂氏38.3度で非常に日差しが強い中、若者および低所得者層が住むオースティン市内南方にあるアパートの訪問に同行させてもらった。ボランティアの運動員は、有権者登録用紙(英語版)を各部屋のドアノブにぶら下げて行った。翌3日は最高気温が37.8度、4日はやや下がり35度であったが、有権者登録用紙の配布は続けられた。ちなみに、フィールドオフィスではヒスパニック系(中南米系)向けにスペイン語版の有権者登録用紙も用意されていた。

 2日は342軒、3日は232軒、4日は193軒、合計約760軒のドアノブに有権者登録用紙をぶら下げた。その際、出会った若い非白人女性が「(トランプ政権における)リーダーシップを一新する必要があります」と筆者に語った。彼女は、現在の共和党主導のリーダーシップに不満を抱いていた。

 今回、筆者は東部ニュージャージー州から応援に駆けつけた50代前半の白人女性の活動について行った。彼女は、2025年から複数回にわたり反トランプの「No Kings(王様はいらない)」抗議運動に参加してきたプログレッシブ(進歩派)の1人である。日本では、マムダニ等に対して急進左派(radical left)とレッテルを貼った言い方をするが、彼女を含めた進歩派は、自分たちを急進左派とは呼ばず、プログレッシブと言い、その言葉に誇りを持っている。

 ちなみに、英誌エコノミストと大手調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2026年8月21~24日実施)によれば、「共和党は極端過ぎると思いますか」という質問に対して、51%が「はい」と回答した一方で、民主党に対しては43%が「はい」と答えた(図表2・3)。日本人のイメージとは異なり、現在の米国民は、共和党の方が民主党よりも極端であると捉えている。

 

 また、上の白人女性は2024米大統領選挙でカマラ・ハリス前副大統領に投票した。今秋11月3日の米中間選挙では、2024年にハリスに投票した有権者が最も投票に対し熱量の度合いが高いという世論調査結果がある。トランプは共和党支持者およびMAGA(米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)の投票に対する熱量の度合いが低いことを懸念している。

 エコノミストとユーガブの全国世論調査(2026年9月4~8日実施)の結果をみてみよう(図表4)。「前回(2022年)の米中間選挙と比較して、より熱意がありますか」という質問に対して、民主党支持者の45%が「より熱意がある」と回答したのに対して、共和党支持者は33%で、民主党支持者に対して12ポイントも下回った。MAGAに限ってみれば38%で、こちらも民主党支持者と比べて7ポイント低かった。

 一方、最も投票の熱意があるのは、トラビス郡で有権者登録用紙を配布した彼女のようなボランティア活動をし、2024年米大統領選挙でハリスに投票した有権者であった。彼らの49%が「より熱意がある」と答え、MAGAに対して11ポイントの差をつけた。

 この数字を見れば、読者の皆さんは、トランプが9月9~10日にテキサス州ダラスで開催した異例の共和党大会の2日目に、大会に参加した支持者に右手を上げさせて「11月、必ず投票所に行く」と宣誓させた理由が分かるだろう。


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