2026年9月28日(月)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年9月28日

 中国からEUへの輸出額が最も多いのは電子機器、オーディオ・ビジュアル機器、機械類、自動車だ。特に中国からEUへの自動車の輸出額は299億ユーロ(5兆3820億円)で、EUから中国への輸出額(164億ユーロ・2兆9520億円)を82.3%も上回っている。この数字から、中国の自動車市場で価格競争が激化し、車の需要に比べて生産能力が過剰になっているため、中国企業が国内で余った自動車のEUへの輸出量を増やそうとしていることがうかがわれる。

 欧州最大の経済規模を持つドイツ市場も例外ではない。ドイツ連邦統計局によると、26年上半期に中国からドイツへの全輸出額は前年同期比で8.8%増えた。これに対しドイツの対中輸出額は前年同期比で12.2%減ってしまった。この結果、26年上半期のドイツの対中貿易赤字額は、前年同期比で30.1%増えて、527億ユーロ(9兆4860億円)に悪化した。

PHEVにも追加関税を検討か

 その中で注目されているのが、EUが中国から輸入されるプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)に対して新たな追加関税を発動する可能性だ。関税率はまだ公表されていないが、論壇では「基本関税10%に追加関税として最高35%を上乗せする可能性」が取り沙汰されている。

 EUはすでに中国からの自動車輸入に関税措置を取っている。EUは、24年10月に中国から輸入されるBEV(電池だけを使う電気自動車)について、従来の基本関税10%に加えて最高35.3%の追加関税を発動した。関税率は、EUの調査に対する協力度などによって、会社ごとに異なる。たとえばBYDのBEVには17%の追加関税、上海汽車(SAIC)には35.3%の追加関税が課された。

 だがEUは24年の時点では、これらの追加関税を中国製PHEVには課さなかった。このため中国企業は、昨年以来、欧州に輸出するPHEVの数を大幅に増やしている。

 例えば24年にBYDがドイツで販売した車の数は2891台にすぎなかったが、25年には2万3306台と8.1倍に増えた。その理由は、BYDがEUによる追加関税がかけられていないPHEVのドイツへの輸出量を増やしたからだ。

 さらにBYDは、ドイツでのディーラーの数を増やし、マーケティングに力を入れている。最近筆者が住んでいるミュンヘンでも、BYDの車を見ることが増えて来た。

 BYDの車の外観は、欧州車に似ている。その理由はBYDがアウディ、ランボルギーニ、アルファロメオのチーフデザイナーだったヴォルフガング・エッガー(ドイツ人)を16年にスカウトし、グローバル・デザイン・ディレクターに任命したからだ。中国はドイツとの間で領土問題などの政治的トラブルを抱えていないので、ドイツ人の中国アレルギーは日本人に比べると少ない。

 ちなみに中国のリープモーターも25年のドイツでの販売台数を前年比で41倍、シャオペンも25年のドイツでの販売台数を前年比で7.6倍に増やした。欧州での中国車の販売台数の絶対数はまだ少ない。しかしこれだけ急激にEU域内での販売台数を増やしている国は、中国以外にない。さらに中国メーカーはEUの追加関税を免れるために、ハンガリーやポーランド、スペインなどEU域内に次々と工場を建設している。


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