政府は9月1日、補助の財源となる基金に予備費から6136億円を積み増すことを決めた。燃料価格を抑えた分は、財政負担として残る。
国際海上輸送のコスト上昇は、運賃やサーチャージを通じて輸入原価に入り、在庫の入れ替えや契約更新を経て製造・販売価格に波及する。企業が利益を削って吸収する場合もあれば、取引先や消費者へ転嫁する場合もある。誰がいつ負担するかは契約や在庫の状況で異なり、影響は時間差を伴って川下へ流れていく。
予測ではなく、コストの波及経路をたどる
次にどこで紛争が起きるか、原油価格がいくらになるかを正確に当てることはできない。企業に求められるのは、不測の事態による波及影響と経路を辿ることだ。
自社の主要品目はどの航路を通るのか。代替ルートに切り替えた場合、日数と追加費用はいくらか。燃料費や輸送費が1割上昇した時、原価と利益にどの程度響くのか。納期を維持するには、在庫を何日分積み増す必要があるのか。
筆者がこれまで多くの企業に接してきた感覚では、こうした問いにすぐ数字で答えられる企業は多くない。筆者の所属企業が6月に実施した自社調査でも、外部環境の変化を「リアルタイムで把握・対応できている」とした回答は22%にとどまった。
代替航路の費用を直接尋ねた調査ではないが、変化を捉える難しさを示す一つの手がかりだ。影響を数字で把握している企業とそうでない企業とでは、次の一報が入ったときの初動が大きく異なる。
地政学リスクも異常気象も、企業には制御できない。できるのは、有事の際にその影響が自社のどこに及ぶのかを、あらかじめ把握しておくことだ。
不確実性が常態化した時代に必要なのは、当てる力ではなく、コストの波及経路をたどる力である。

