2026年10月8日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年10月8日

 2011年11月、オバマ政権は、中国の台頭に対抗しアジアの成長を取り込むべくアジアへ軸足を移すことを提唱し、13年9月にはシリア情勢に関連し、米国はもはや世界の警察官ではないと宣言した。これらの背景には、長年の関与にも関わらず、中東の泥沼から脱出できないことやグローバル化による経済格差の拡大に対する国内の不満の高まりがあった。

 しかし、「イスラム国問題」やアフガニスタンの不安定化、さらには財政難もあってアジア重視が実行されたとは言えない。貿易面でアジアとの経済連携を目指した環太平洋経済連携協定(TPP)も国内の雇用を奪う等の理由で撤退することになった。

トランプの台頭も招く

 9.11以降の米国の中東関与の相次ぐ失敗や負担に対する米国民の政府に対する不信感の高まりが、トランプの台頭を招いたことが、米国にとって9.11以降の政策上の失敗から派生した最悪の結果とも言える。トランプ政権においても中国が最大の脅威であるとの認識は定着したかに見えたが、自国利益への集中を主張するMAGA派の非介入主義と、ディール優先のトランプの一貫性の無い対応により、そのような認識は安全保障面では空洞化しつつある。

 また、国益優先で国際秩序や国際法を無視する傾向は既にネオコンの外交にも見られたが、トランプ政権においてはこれが極めて顕著となり、ロシアによるウクライナ戦争の長期化にもつながっていると思える。

 トランプの法の支配の無視、無神経な発言、関税措置に対する異常な執着等により、同盟国との信頼関係は損なわれ、米国は孤立している。他方、中国は表面上「多極化・多国主義」を掲げつつ、中国が実質的な主導権を握ることを目指して国際社会で多数派工作を進めている。

 中国をディールの対象としての経済的脅威としか位置付けないトランプは、このままでは中国のさらなる台頭を抑止できず、東アジアの安全保障について誤ったシグナルを送ることが懸念される。

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