インドネシアの1万7000の島々が連なるその端、スンダ列島の東端にティモール島という小さな島がある。その東半分が東ティモールで、人口100万を擁する小国である。2002年それまでのインドネシア統治を脱し、アジアで最も新しい独立国として注目を浴びた。と、同時に独立を巡るいざこざから一般には東ティモールと言えば紛争国、とのイメージがついて回る。そこが今大きな変貌を遂げている。
首都ディリの一角に完成したショッピングモール、ティモールプラザはその中にあって異様なほどの賑わいだ。休日ともなればディリ中の買い物客が押し寄せ、広大な駐車場は買い物客の車であふれかえる。実は変化が訪れたのはこの3、4年のことだ。東ティモールは02年の独立以降、長く国内のごたごたが続いてきた。そういう時、石油資金が国庫に流入し始める。
ショッピングモール・ティモールプラザ (YOSHITAKA HANADA)
東ティモールの南、オーストラリアとの間に横たわるティモール海がその原資だ。そこに豊富な石油、天然ガスが眠っていた。日本企業も参加し採掘が始まる。その収入が東ティモールに流れ込みだしたのが今から7、8年前。石油収入は新たに創設された石油基金に貯め込まれ、とうとう2014年現在168億ドルに達した。東ティモールの年間予算が17億ドル程度だから、実に10年分の資金が貯め込まれた。
政府は貯め込んだ資金を元手にインフラ整備や教育、衛生等の生活改善に国家予算を配分しだした。また、退役軍人等に年金の形で直接給付を始めた。東ティモールにこれといった産業はない。だから経済のほとんどは政府主導だ。急に金を持ち始めた政府が一気に経済活性化に乗り出した。その効果が3、4年前頃から現れだした。