2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月10日

 豪シドニー大学国際問題研究センターのジョン・リー研究員が、6月2日付でDiplomat誌ウェブサイトに掲載された論説で、ASEANは、立場を強化し、中国による操作に対応するためにも、コンセンサスではなく、特定多数決による意思決定に変更するべきである、と主張しています。

 すなわち、シンガポールでの恒例のアジア国防相会議(シャングリラ会議)で、米日は中国の行動を念頭に強制による現状変更の試みに反対する、国際法に基づく解決をすべきであると主張した。これはASEANが言ってきたことである。しかし、ASEANはゆっくり確実に実際的な意味を失いつつある。

 中国の台頭でASEANは相対的に規模が小さくなっている。1996年、ASEAN諸国の国防費合計は中国の1.3分の1だったが、2013年は5分の1である。1996年当時、中国は「平和的台頭」論でASEANを説得しようとし、外交規範に沿って活動していた。しかし、今や、中国はアジアの海洋国に対峙する用意があることを示している。中国が行動規範交渉を遅らせていることにそれが表れている。

 米日豪は、ASEANのプロセス尊重を言いつつ、ASEANのコンセンサスによる意思決定が麻痺につながっていると知っている。米日豪の国防相が出した共同声明は中国の行動を変えるための協力を謳ったが、行動規範はついでに言及されたに過ぎない。

 中国はASEANの麻痺を喜んでいようが、米国とその同盟国はASEANが米日の行動に正統性を付与する役割を持つと見ている。ここにまだASEANの力がある。中国もカンボジアを通じて2012年にASEAN共同声明を阻止したように、そう考えている。

 ASEANは、また、力による紛争解決を禁止する宣言的行動規範を米日と発出し、中国に参加を促し得る。中国は拒否しようが、中国にとって、外交的コストとなろう。


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