2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月25日

 3月13日、Walter Lohman米ヘリテージ財団アジア研究センター部長は、米中経済安全保障検討委員会の公聴会で「中国に焦点を合わせた東南アジア政策」と題して、意見陳述を行いました。その中で、ローマン部長は、ASEAN諸国は米中のはざまで米中のいずれかの味方になることを避けようとするが、ASEANが地域の平和に資するように米国は仕向けるべきである、と論じています。

 すなわち、西太平洋における平和と繁栄は中国の台頭をどうマネージするかにかかっている。米国の利益のためには、ASEANがきちんと対応するようにASEANに圧力をくわえる必要がある。ASEANは米中のどちらかを選択したくないと言うが、これは対中関係を悪くするようなことをさせないでくれという意味である。

 オバマ政権は平穏な米中関係を望み、ASEANのこういう意見を受け入れてきた。2009年以来、中国は航行の自由や同盟国の安全など米国の利益に挑戦したが、ASEANは中国に文句を言うのを躊躇した。

 ASEANは、米国と中国に同様に接し、自立性を保とうとしている。最近、中国からの挑戦が多いが、ASEANには、中国への懸念と同時に、中国への配慮がある。

 東シナ海でのADIZ(防空識別圏)設定や南シナ海での中国の漁業規則の実施に対して、ASEANはどう反応したか。中国のADIZ宣言は、日・ASEAN首脳会議の直前であったが、首脳会議共同宣言は「国際法に従い、航行の自由と飛行の安全を確保するために協力を強化」するというもので、中国でも署名できるようなものであった。漁業規則については、日米越比は非難したが、1月、ミャンマーでのASEAN外相会議では、中国に言及せず、最近の南シナ海での出来事に懸念を表明しただけだった。

 ASEANの対中経済関係は重要である。中国はASEANの最大の貿易相手であり、中国からの投資も多い。

 東南アジア諸国の利益の錯綜とコンセンサスによる意思決定は、南シナ海での緊張のような安全保障上の深刻な危機に対処するのに有効ではない。ここ20年、南シナ海についてのASEANの対中対話は(1)行動規範の交渉、(2)国連海洋法の適用、(3)「自制」の制度化の3点を目指してきたが、すべてで失敗してきている。中国の行動規範協議の受け入れはそれほど評価されるべきではない。


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