7月13日付のForeign Affairs誌のサイトに、アンドリュー・エリクソン米海軍大学准教授とオ-スティン・ストレンジ同大学中国海洋研究所研究員が連名で論説を寄稿し、中国がサンゴ礁を埋め立て、島を作る活動をしていることに警鐘を鳴らしています。
すなわち、ジョンソン南環礁で、中国は大規模な埋め立て工事をしている。1988年にベトナムから奪取した後、これまで海面下にあったところに、レーダー施設、対空兵器、ヘリパッドなどを作っている。滑走路を作るのではないかと言われている。
中国はクアテロン環礁、ガヴェン環礁、ジョンソン北環礁での小規模埋め立てをしているが、フィアリー・クロス環礁が埋め立て作業の基地になっていて、米軍のインド洋のディエゴ・ガルシア基地の2倍の基地を作るとされている。将来、 南シナ海での防空識別圏(ADIZ)の支援基地にもなり得る。中国外務省報道官は、これらの環礁は中国の主権下にあり、何をしようが中国の主権の範囲内と言っているが、現実には領土拡張、南シナ海での安全保障環境の変更である。
中国はスプラトリー諸島とその周辺82万平方キロを主張している。550以上の環礁などがあり、ブルネイ、マレーシア、比、台湾、ベトナムも一部に領有権主張をしている。中国はその主張強化のために兵士を駐留させ、レーダー施設などを作ってきた。他の領有圏主張国も同じようなことをしている。しかし経済的に他国は中国のような規模の埋め立てを実施する能力はない。
中国のこのような島建設の意味は何か。
中国はこれらを起点に200カイリの経済水域(EEZ)を主張しようとしていると言う人がいる。しかし、国連海洋法条約は人工構築物は島ではなく、EEZは持てないと明記している。島ではないことを写真で明らかにし得る。なお中国は沖の鳥島は島ではないとしている。
しかし埋め立ては意味がある。これは石油掘削などの活動や軍事活動のインフラになる。特に軍事的には中国のパワー・プロジェクション能力が強まる。中国のみが制空、制海能力を持つだろう。またそれは防空識別圏(ADIZ)設定につながる。ASEAN諸国の反発があるので、慎重さがいるし、今は漠然としている「9点線」の経緯度をはっきりさせねばならないとの問題もある。それに中国の監視能力は広大な中国の主張地域をまだカバーできない。しかし他国も中国に軍事的に対抗し、軍備拡張競争になりかねない。