台湾国立政治大学中国研究センター長の王振寰(Wang Jenn-hwan)が、9月3日付タイペイ・タイムズ紙掲載の論説で、ひまわり運動を契機として、台湾では両岸関係についての世代間の認識ギャップが顕在化しており、中台両政府は、新たな思考を必要としている、と述べています。
すなわち、現在、中台関係に最も大きな影響を与えているのは、世代間の認識ギャップである。ひまわり運動の後、台湾政府は、若い世代が中国との交流のさらなる強化に賛成していないことに気づいた。他方、中国は、台湾に対する経済的、政治的働きかけがあまり奏功していない理由は、中国の台湾社会への理解不足だけでなく、台湾の若者のアイデンティティをコントロールできない点にもあることに気づいた。中台間で、「社会的ギャップ」が拡大、深化していることは明白である。
中台関係にかかわるあらゆる政策が、台湾の若者の疑念、抵抗に遭っており、台湾の社会に浸透していない。経済的統合への抵抗は、次のような、深い構造的要因の結果である。
第一に、40歳以下の若者は、台湾の民主化プロセスの真っ只中、台湾しか知らない世界で成長しており、中国への心情的な愛着やアイデンティティは皆無であるが、40歳以上の人々は、国民党の「偉大な中国」教育を受けて育ち、中国人であるとはどういうことかについて、一定の理解がある。
第二に、多くの若者が台湾は経済を発展させるために中国を利用する必要があると認識し、中国で働く用意もある、との研究結果があるが、これは、若者たちが、経済的統合が政治的統一に至るべきであると考えていることを意味しない。若い世代は、民主主義と自由に、自信とアイデンティティを持っている。それが、彼らが中国の強権的政府に強い不信感を抱いている理由であり、中国が現在の政治体制のまま台湾の若者の心を捉えることは、困難になっている。
第三に、台湾の若者の中国への信頼の欠如は、中国のパワー増大に益々不信感が高まっていることを反映している。彼らは、「アジアの虎」としての経済的奇跡の頂点、緩やかな停滞、給与水準の低下、雇用機会の緩やかな喪失を経験してきた。対照的に、中国は、貧困を脱して強い経済を手に入れ、上海や北京などの大都市はグローバルなメガロポリスになり、そうした都市では給与が台北を上回っている。こうしたことは、台湾の若者に、搾取されていると感じさせ、国民党への不満を増大させ、中国の強権的制度を拒否する原因になっている。