2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月10日

 中台関係における「社会的ギャップ」に取り組むには、中台政府は、思考を新たにせねばならない。国民党は、台湾の若者を、経済的グローバリゼーションという言葉で説得しようとすることは最早できない。中台関係の「逆行」を解決するには、彼らの不満、懸念、対中不信を真正面から受け止め、世代間の公正に資する、社会・経済政策を採用しなければならない。中国政府は、ひまわり運動を受け、台湾の社会により目を向けるようになったが、台湾の若者とその考え方への対応には、なお忍耐が必要である。台湾の若い世代は、中国については「血は水よりも濃い」とは感じていない、と論じています。

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 論説は、台湾の民主主義が不可逆的であることを改めて示しています。特に、民主主義台湾しか知らない若者の、独裁的な中国に対する不信感が、上の世代よりも著しい、と言っています。また、多くの世論調査がそういう結果を示しています。

 本年3月の「ひまわり運動」は、そのことを具体的な抗議活動の形で表面化させただけではなく、何十万人という一般市民たちがこの運動を支持し、行動したところに画期的意味がありました。中国共産党独裁体制は、民主主義の定着した台湾をコントロールすることは容易ではないと認識したはずです。

 中国側からの台湾人への呼びかけは「数千年の偉大な中華文明をもつ中国の懐にかえってくるように」というナショナリズムの訴えです。しかし、このような呼びかけも、現実の彼らの生活には「本来、無関係なこと」なのでしょう。台湾人には、自由で民主的な手続きが保障されたシステムのもとで安心感の持てる生活を送れるかどうかということが何よりも重要です。

 中台関係の最新の動きの中で注目すべきことは、台湾側大陸委員会副主任(日本式に言えば、大陸問題担当副大臣。事実上の中国との交渉代表者)のスパイ容疑事件です。目下、本人は司法当局の取り調べを受けていますが、この事件は、ひまわり運動と並び、馬英九政権への深刻な打撃となっており、中台接近の動きに対し、また一つ大きな歯止めがかかった形となりました。

  
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