テレビのニュースには拾われないかもしれないけれど、ネットの一部で盛り上がったあの話題。知りたい人へお届けします。
ウィキペディアの中の「短歌」
「じわじわくる」面白さ
昨年末につくられたツイッターアカウントながら、すでにフォロワー数が3万人近くとなっている人気アカウントがある。「偶然短歌bot(@g57577)」というアカウントだ。
Twitter用語として使われる「bot(ボット)」とは、実際に人がツイートを行うものではなく、自動発言システムを使って定期的にツイートを行ったり、特定の時間にツイートと行う機能のこと。リプライに対して自動的にリプライを送るbotなどもある。
「偶然短歌bot」のプロフィール欄には、「ウィキペディア日本語版(2014年11月の版)で、偶然57577になっている文章を短歌としてつぶやきます」と説明がある。ウィキペディアは人名や事件名なども網羅したネット上における百科事典だが、「偶然短歌bot」の「中の人」は、ウィキペディアに載っている説明文から偶然「五七五 七七」のリズムになっている文章を抽出するシステムをつくり、それをつぶやいているのだという。
実際にどのようなつぶやきなのか見てみよう。
西側にあったホームは撤去され、花壇に花が植えられている ウィキペディア日本語版「三方駅」より(https://twitter.com/g57577/status/555756891000025088)
「まゆあげ」の表情が付き、「そうなの?」とたずねるような表情となる ウィキペディア日本語版「日本手話」より(https://twitter.com/g57577/status/553597257019555840)
竜兵を中心とする飲み仲間「竜兵会」の一員である ウィキペディア日本語版「有吉弘行」より(https://twitter.com/g57577/status/556873838542458880)
これらのツイートには「じわじわくる」「だめだ面白すぎる」といった感想が寄せられている。
偶然短歌botの面白さをわざわざ解説するのは野暮かもしれないが、あえて言うのであれば、偶然短歌のリズムを刻んでしまった文章が持つ「余韻」だろう。本来、単なる説明文に過ぎなかった一文が、「五七五七七」に抜き出すことで情緒を帯びる。我々日本人は「五七五」を俳句、「五七五七七」を短歌のリズムとして身につけてきたからこそ、このリズムに意味を感じずにはいられない。ウィキペディアは事典であり、本来詩的な要素から最もかけ離れた説明的な文章が載せられたもののはずだ。こういった文章が突然、意味ありげな文章に趣を変えることに、たまらない面白さがある。