制作者は「手作業」の苦労も語る
それにしても、偶然短歌botのつむぐ「短歌」は秀逸だ。どこかストーリーを感じさせるようなものもある。
質問を受け付ける場を設けたが、結局誰も質問に来ず ウィキペディア日本語版「スマイリーキクチ中傷被害事件」より(https://twitter.com/g57577/status/550970210032029696)
前日に断りもなくミヨちゃんは北海道に行ってしまった ウィキペディア日本語版「魔女っ子チックル」より(https://twitter.com/g57577/status/556692974013521920)
ある道を右に曲がれば東大で、まっすぐ行けば公園なので ウィキペディア日本語版「マッスル北村」より(https://twitter.com/g57577/status/554714927077027840)
制作者である「@inaniwa3」氏の制作記(http://inaniwa3.hatenablog.com/entry/2015/01/01/152927)には、「五七五七七」を抽出したシステムの作り方以外に、制作で苦労した次のような点もつづられている。
「MeCab を使って文字数数えれば簡単にできるだろうと思っていたんですが、単純に57577で抽出しても短歌になっていないと思われるものが多くて、そこからが苦労しました。なので、抽出しては抽出ルールを見直して、抽出してはまた抽出ルールを見直して…、というのを繰り返す作業が主でした。この作業である程度ましなものが残るようになりましたが、まだイマイチなのも残ってしまっています」
@inaniwa3氏がどのような基準で「短歌になっていない」と判断したかはわからないが、抽出された「短歌」を見るに、きっと繊細な作業だったのだろう。また、ウィキペディアには実際の短歌作品も載っているため、これを省くのも手作業で行っているという。さらに、ツイッターでつぶやく頻度は「5・7・5・7・7」時間おきというのも芸が細かい。
学生時代、短歌や俳句を授業で習い、「退屈だ」「とっつきづらい」という印象を持った人もいるかもしれない。しかし、そういった人であっても、この偶然短歌botは案外楽しめるのではないか。現代語だからということもあるだろうが、偶然短歌botは押しつけがましくない自然さで、「五七五七七」というリズムへの親しみを再認識させてくれる。ウィキペディアの中から「五七五七七」のリズムになっている文章を探す、という国語の授業があってもいいのでは。そんなこと感じてしまうほどすごく、ナイスなbotだと思うのです。
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