桐生知憲の第四社会面

2015年7月1日

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 プロペラの一部が破損していたため故意に落下させたものではないのではないかとの観測もあった。加えて、機体のシリアルナンバーがあるとはいえ転売されていたり、販売店側が売り先の情報を記録していなかったりすればドローンを操縦した人物を探すのは容易ではないとの見立てもあり、一部には捜査が長期化するとの見方もあった。

 ところが、発見から2日後の24日の夜、事態は急展開を見せる。東京から300キロ以上離れた福井県の小浜警察署に「反原発を訴えるために、自分が官邸にドローンを飛ばした」「福島の砂をプラスチック容器に入れた」などと話して男が出頭。男は元航空自衛官で、ドローンのコントローラーや別のドローン2機なども持参しており、翌朝、威力業務妨害で逮捕されたのだった。男は計画の詳細を綴ったブログを書いていて、この中には逮捕覚悟であることも記していた。

あまり注目されない官邸職員の怠慢さ

 男の行為は一歩間違えばテロに至るものであり、決して許されることではない。ただ、逮捕容疑にひっかかりを覚えた。官邸の屋上にドローンを落下させたことで官邸の業務を妨害したとして威力業務妨害が適用されたのだが、本当に官邸の業務は妨害されたのか。実際に男がドローンを官邸に侵入させたのは4月9日の未明。

 発見までの2週間弱の間、官邸の職員は屋上を巡回していなかったということだ。官邸の周辺は警視庁の総理大臣官邸警備隊が警備を受け持つが、官邸内部は官邸職員が警備にあたるという割り振りで、事件後、24時間態勢で官邸の屋上で見張りをさせられている警察官のほうがいい迷惑だ。ドローンを飛ばした男に注目が集まったことを口実に、官邸職員の怠慢さはあまり指摘されていないのが気になるところだ。

 官邸ドローン事件の衝撃も冷めやらぬ5月9日、長野の善光寺の境内に突如、ドローンが落下した。当時の善光寺は御開帳の行事が行われており、大勢の参拝者がいる中で、ドローンは法要に向かう行列にいた僧侶の目の前に落下したのだった。このときは、15歳の少年が「操縦を誤って落としてしまった」と名乗り出て、警察から注意を受けて終わった。

 少年はこれに懲りることなく次の行動に出る。同月の14日には国会議事堂の庭園でドローンを飛ばそうとしたのだ。ところが、これが見つかってしまい、通報を受けた警察官と口論になってしまう。「ドローンに触れるのやめてもらえますか」「(ドローンを飛ばすことは)法的に規制されているんですか」。

 口論の様子はインターネット上で中継されていた。警察官が署への同行を求めると、「これは任意ですか?強制ですか?」と返し、警察官が任意だと告げると、「じゃあ拒否します」と答えた。

 結局この日、少年は、警察によって自宅に送り返されるが、翌日の15日には千代田区紀尾井町の公園でもドローンを飛ばそうとしたほか、19日には有楽町駅周辺でドローンに取りつけたカメラで周囲を撮影し、その都度、警察官から注意を受けたのだった。

 このほかにも少年は、京都の本願寺や兵庫の姫路城でドローンを飛ばし、撮影した画像をインターネット上で配信していた。14日に警察官と口論になってからはツイッターで「不当な拘束をされた」などの警察批判も行っていた。

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