2024年4月26日(金)

地域再生のキーワード

2015年8月4日

正職員になるために、予備校通い

 大学を卒業すると町の臨時職員になり、予備校に通って公務員試験の準備を始めた。1年の努力が実って町の正規職員として採用されたのだ。

写真の町課職員

 実は、東川町は移住受け入れを政策の大きな柱のひとつにしている。北海道の自治体はどこでも急速な人口減少に直面しているからだ。

 力を入れてきたのは子どもを育てやすい環境づくり。2003年には構造改革特区に立候補し、全国に先駆けて幼稚園と保育所を一体化した。中学生までの医療費を無料にし、保育料も子ども2人目は半額、3人目以降は無料にしている。住宅建設にも助成金を出している。

 「札幌より東京の方が近いんです」と住民が笑っていうように、旭川空港まですぐという地の利の良さが武器になっている。実際、一時は7200人にまで落ち込んだ東川町の人口は8000人近くにまで増えているのだ。そんな移住歓迎の町だけに、大阪から移り住んだ若者である吉里さんは、まさに成功事例なわけだ。

写真少年団の子どもたち

 吉里さんは町に作った「写真少年団」の先生役を引き受けている。月に2回、子供たちが集まり、一眼レフカメラを手に、思い思いの写真を撮る。旭川の有名スポットである旭山動物園に“遠征”することもある。「写真の町ひがしかわ写真少年団」名でフェイスブックを作り、撮影した写真をアップしている。やはり大阪から移住してきた町内の写真家が、学校でカメラの使い方などを教える授業も受け持っている。写真の町を担う次の世代を育てていこうとしているのだ。

 町長が写真の町宣言を出した頃、ほとんどの町民は「何で写真なんだろ」と思ったそうだ。だが長年続けてきたことで、「東川がだんだん写真の町らしくなってきた」と、町内で菓子店「ゝ月庵(てんげつあん)を営む高島郁宏さんは言う。写真の町実行委員会の副委員長のひとりだ。美しい旭岳の風景など写真の被写体にぴったりというわけだ。

撮影をする写真少年団の子どもたち

 「東川町では『写真の町』を掲げることで、美しい景観や、親しみやすい人、写真写りの良いモノづくりにつながると考えてきた」と窪田課長は言う。毎年高校生に写真を撮られる町民は、すっかり笑顔づくりが上手になった、という。写真を通して、人と人のふれあいを深めていこうというわけだ。


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