町の職員は営業マン
長く続けてきたかいがあって、写真の町としての東川の知名度は上がっている。特に写真家の間ではまず知らない人はいない。というのも30年にわたって「写真の町東川賞」という写真の賞を出し続けているからだ。もちろん、自治体が写真作家賞を制定したのは全国で初めてのことだった。
しかも自薦式ではなく、町が依頼したノミネーターが推薦した作品を審査して決めている。国内作家賞だけでなく、海外作家賞も出し、海外の優れた作家を日本に紹介する役割を果たしてきた。そうした積み重ねによって写真家の間で一目置かれる賞へと育ってきたのである。受賞作品はパネルにして文化ギャラリー前の街路灯に掲げられている。
新人作家賞、特別作家賞なども含む東川賞受賞者は、毎年夏の「写真の町国際写真フェスティバル」で表彰されている。写真甲子園も行われるこの期間は、全国各地から写真ファンが集まってくる。400メートルにわたって歩行者天国を設けて「どんとこい祭り」も同時に開催、帰省シーズンとも重なるため、多くの人たちで町は賑わう。推計で3万8000人が集まるが、そのうち5000人くらいが写真目当ての人たちだろうと町では推測する。
「町長以下、町の職員はみんな営業マン。本当にアイデアマンだと思います」
実行委員会でやはり副委員長を務める町内在住の藤原隆子さんはいう。町を売り出すために次から次へと新しい施策を打ち出す松岡市郎町長は、自治体の首長の間でもアイデアマンとして知られる。それが職員全体に行きわたっているというのだ。
吉里さんも職員になって驚きの連続だったという。「予算がない、前例がない、他の町ではやってない、ことを実行に移せと言われます。二番煎じでは許されません」と笑う。
東川町の「写真の町宣言」はこんな文章で始まる。
「自然と人、人と文化、人と人、それぞれの出会いの中に感動が生まれます」
そんな感動が、多くの人たちを東川町に引き付けている。
(写真・生津勝隆)
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