2024年11月26日(火)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年9月28日

 コピーの枚数を制限すると、紙の枚数を1枚、2枚と数えるばかりで頭を使わなくなる。A4・1枚で、となると、全社・全グループの一人ひとりが頭を使うようになる。これこそが本当の経営である、というのです。

 この話を小田切新太郎会長にしました。会長は、「社長がそう言われることで経営は安泰ですね。私は安心しました。心から嬉しいです」とおっしゃいました。

 私は気の小さい心配性ですから、金川社長にこう聞きました。

 「全社の書類にはA4・1枚で済まないものがあると思うので、そういう場合は別に付帯書類をつけていいという通達を出していいでしょうか」

 すると、「それが君の情けなく、なげかわしいところだ。原則を作ったらそこに例外を設けてはならない。全部A4・1枚。虫眼鏡で見なくちゃいけないような小さな文字でもいい。それを、付帯書類つけてもいいなんて例外を作るという君の考え方こそが信越化学グループの経営に損害を与える」と、また叱られてしまいました。

 このエピソードに、「合理化とはどう進めたらいいのか、トップはどういう考え方をするのか」という経営の根本が詰まっています。

管理部門は事業部門の“しもべ”

 経費効率化というと、経理・財務部門が役割を担うことになることが多いと思いますが、経理・財務が威張って旗振り役で合理化を進めるとうまくいきません。

 社長が旗を振って、率先垂範・陣頭指揮すれば、販売や製造、原材料調達などの部門の人たちも、経営の視点(マネジメント・アイ)から合理化しようとします。経理・財務が「経費削減」ばかり唱えると、会社が暗くなってしまいます。

 「会社では、外のお客様からお金をいただいてくる、販売・製造・研究部門が大事です。人事や経理・財務といった管理部門はあくまでバックアップ部門です。経理・財務の人間は『われわれは事業部門(販売・製造・研究)の“しもべ(僕)”なんだ』という気持ち、行動を常に表すことが大切です」と小田切会長・社長から教わりました。

 小田切さんは経理・財務を65年なさった、経理・財務のプロ中のプロなんですが、小田切さんのされた仕事のなかで、もっとも重要で私にとってショックだったのは、経理・財務の権限が大幅に減らされたことでした。

 小田切さんは、社長になったときある決意をしました。それまでの権限構造は、全社を100とすると、そのうち40が人事、30が経理・財務、あとの10ずつが販売・製造・研究でした。


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