男らしさで売った松田優作(1949〜1989年)も下関である。不敵に構えた面魂と機敏な動きで人気が出て、これから本当に大スターの風格が身にそなわるだろうと期待されていた。早すぎる死だったと言わざるを得ない。「家族ゲーム」のハード・ボイルド調映画のパロディみたいな家庭教師、アメリカ映画「ブラック・レイン」の凶悪なやくざなど、いずれも精悍さと強い気負いで忘れ難い演技だった。

若くして早くも渋い風格を身につけている益岡徹も下関出身の俳優である。伊丹十三の「マルサの女」の国税庁の査察官とか、「釣りバカ日誌」の課長とか、立派な立場なのにちょっとおかしいというような人物をユーモラスに演じるとじつにいい。
岩国市出身に大友柳太朗(1912〜1985年)がいる。柄が立派で人の良さが自ずから顔に現れており、時代劇スターとして活躍した。しかし本人は演技が生硬だと、本気で悩んで言う生まじめな人だった。最期の作品「タンポポ」の老人役などは、その生まじめさがたくまずしていい味のユーモアになっている珍しい巧演だったのに。
防府市には前田吟がいる。「男はつらいよ」の常識外れの寅さんに対する常識家の義弟。シリーズの重要な支えだった。