前向きに読み解く経済の裏側

2016年6月20日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

図2:消費者物価指数前年比の推移

 通常、物価は図2のような前年比のグラフを見ることが多いのですが、時々見かけるのが「石油ショックから1年経過して、ようやく物価も落ち着いて来ました」というコメントです。明らかに間違えていますね。新入社員が書いた原稿を上司がチェックせずに発表してしまった、ということなのでしょう。

 実際の物価は、石油ショックの翌月から安定していたのです。それに気付いたのが1年後だったというだけです。このように、前年比のグラフはミスリーディングです。物価のように、季節性が大きくない統計は、そのままの数字をグラフにすべきだと思っています。

前年比の問題点を解消する「季節調整値」

 チョコレートの売上げは、季節性が大きいので前年比で見る必要がある、と上に記しましたが、それだと売上げの変化に気付くのが1年後になる、等々の問題があります。そこで、チョコレートの売上げを前月と比べたい、というための工夫をしてみましょう。

 2月のチョコレートの売上げが普通の月の3倍あるとしましょう。2月の売上げを3で割ってグラフに記入すれば、前月と比べる事ができるでしょう。では、2月の売上げが普通の月の3倍あることを、どのように求めるのでしょうか?

 過去10年間の毎月の売上げのデータを用意します。全部合計して120で割り、1カ月当たりの平均を求めます。次に2月のデータだけを取り出します。全部合計して10で割り、1カ月あたりの平均を求めます。最後に2月の平均を全体の平均で割れば、2月が普通の月の何倍の売上げなのかがわかります。同じ作業を2月以外の月についても行なえば、グラフの完成です。

 これを「季節調整値」と呼びます。統計によっては、発表時に季節調整値も併せて発表される場合がありますので、その場合には季節調整値のグラフを見るようにしましょう。統計発表官庁の計算式は非常に複雑なようで、上記の方式で計算した結果と結構大きなズレが生じる場合もありますが、考え方としては上記で問題ありませんので、季節調整値が発表されない統計や、自社の売上げ等の分析には、上記の計算方法で充分対応できます。試してみてはどうでしょうか。

  
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