湖水系と塩水系
話は飛ぶが、世界は小さな政府を目指し、活力のあるグローバル企業が登場することで、すべてうまく流れるという議論がある。米国では五大湖周辺の大学、特にシカゴ大学を頂点とするため淡水系と呼ぶようだ。その一方で、高負担、高福祉こそが人類の平和と繁栄の基礎だとする考えは、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など東部名門を頂点とするが、それらは海岸に位置するので塩水系と呼ばれる。この淡水系の水源はハイエク先生であり、塩水系の源流はシュンペーターとなるようだ。この二人は、勿論オーストリア人である。
一方、経済学の分派と言われる経営学を見ても、やはりドラッカーは元を辿ればオーストリア人であり、シカゴ大学に連なるコトラーとハーバード大学のポーターが巨頭となっている。
伊達にウインナ・コーヒーとザッハトルテを食べるのではなく、ウィーンのカフェには必需品としてあらゆる新聞が読めるようになっている。反知性主義が危惧される中で、今度のオーストリア大統領選挙結果は、知性主義の香りがする。さすがに欧州は「捨てたものではない。」
といった舌の根も乾かぬうちに別の情報が届いた。国連の事務総長で名をなし、大統領選に当選したワルトハイムが、かつてナチス党員であったと発覚して欧州で鼻つまみとなった経験と、ヒトラーの時代の屈辱が頭をよぎったからだというのだ。
原因は何であれ、世界中のムードと違う結果を突きつけた事実は大きいと思うがいかがであろうか。