「こうすればいい」「これが効く」情報が溢れすぎていて、何が正しいのかもわからない。
そんな悩みに答えるべく、この連載ではポイントをおさえた「70点のとり方」を専門家の方々に質問していきます。
質問:K2シロップをあげるとき、誤ってこぼしてしまいました。半分ほどは飲ませたと思うのですが、正確な量がわかりません。病院でもう1袋もらって飲ませた方がよいでしょうか?
答え:どれくらい飲めたかにもよりますが、念のため病院に問い合わせるのがよいでしょう。
答える人 石橋涼子先生(石橋こどもクリニック院長)
出生後7日までに発症する新生児ビタミンK欠乏性出血症とそれ以降の乳児期に発症する乳児ビタミンK欠乏性出血症を予防するために、日本ではビタミンK2シロップを出生時、産科退院時、1カ月健診時の計3回、経口投与することが定着しています。
2010年には、生後3カ月まで毎週ビタミンKを投与するガイドラインが日本小児科学会から出されましたが、家庭での投与のための準備が整う前にガイドラインが出たために現場では混乱が生じました。
翌年になって修正版ガイドラインが出され上記の3回投与が標準となりましたが、毎週投与も並行されているので病院によって異なる方式がとられています。
最初の2回は産科でスタッフが確実に飲ませていると思いますが、その後は処方されたものを自宅で飲ませる場合も多いでしょう。飲ませたけど吐いてしまったのならば、全部吐いているわけではないので追加はしなくても大丈夫ではないかと思います。飲ませる前にこぼしてしまったのなら、病院に問い合わせて追加のシロップをもらったほうがいいでしょう。
K2シロップについては国によっても対応がまちまちで、国内でも異なる方式が併用されていることからも、明確なガイドラインを示すことの難しさが窺えます。人工栄養(粉ミルク)中心(半分以上)ならその中にビタミンK2が入っていますし、母乳中の含有量も個人差があり、一律の必要投与量を厳密に決めるのは難しいのです。
反対に早期産や、合併症を起こしてしまった場合などは確実な投与が必要ですし、摂取しすぎて害があるわけではありません。心配なら出産した産科に問い合わせるのが確実でしょう。
K2シロップのガイドラインが2010年に改訂されたきっかけは、前年に山口県で生後2カ月の女の子がビタミンK欠乏症による出血から硬膜下血腫を発症し、死亡したという事故があったからでした。
担当した助産師が「ホメオパシー」を信奉していて、ビタミンKと同程度の効果を持つとされる「レメディ」を新生児に与え母子手帳に「ビタミンK投与」と記載し、実際にはシロップを投与しなかったことがわかっています。
K2シロップを与えないことは確実にリスクを高めますので注意してください。
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