2022年8月18日(木)

Wedge REPORT

2017年3月24日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 チャオさんは、日本の大学でも国際学生寮の建設を考えていた。日本とアジアの政治情勢が厳しい時だからこそ、将来に向けた若者どうしの本物の交流が不可欠だと考えた。ビジネスで知り合い20年以上交流を続けていたファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長に相談すると、柳井氏の母校である早稲田大学が中野に学生寮を建設する構想を抱いていることが判明。チャオさんが香港の仲間の実業家グループと共に集めた資金から1億円、柳井氏も3億円を寄付する話がまとまった。

 柳井氏は「チャオさんから話があった時に、私も中国と日本が敵対し険悪さが継続するのは危険だと悶々としていた」とメディアに答えている。こうして14年4月に東京・中野にオープンしたのが、国際学生寮「早稲田大学中野国際コミュニティプラザ」である。

180億円の私財を投じ奨学金基金を創設

 次にチャオさんは奨学金の創設を決断する。14年5月、チャオさんは1億5000万米ドル(約180億円)という巨額の私財を投じて香港に「百賢教育基金会(Bai Xian Education Foundation)」を設立。うち1億米ドルの運用益で「アジア次世代指導者奨学金プログラム(AFLSP)」を始めた。奨学生の選考や支給に当たるAFLSPの運用機関として「百賢亜洲研究院」を香港に創設した。

 奨学金は返済義務のない給付型で、大学によって差があるが、おおむね1人あたりの年間給付額は2万5000米ドル。学費や入学金、宿舎代、生活費などが含まれる。奨学金としてはなかなかの水準だ。

 「せっかく留学してもアルバイトの皿洗いに明け暮れるのでは、その国の悪いところばかり目に付くことになる。十分な奨学金を与えることで、その国の良いところをしっかり見て体験して欲しい」とチャオさんは言う。

 AFLSPの対象として大きく「アンカー大学」と「パーティシペーティング大学」の2つに分け、前者には大学別に定員を割り当てて大学自身が選考する一方、後者は10名までの推薦枠を持ち、推薦者の中から研究院が選ぶ。前者には京都大学、一橋大学、早稲田大学、北京大学、浙江大学、香港科学技術大学の6校。後者には東京大学や清華大学、台湾国立大学、ソウル国立大学など10校が指定されている。学業優秀で学位取得を目的に留学する学生を支援するのが狙いだ。

写真を拡大 百賢アジア研究院による奨学金授与生の人数
出所:百賢亜洲研究院提供の資料 

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