質問:夏かぜって具体的にはどんな病気なのでしょうか? どう予防すればいいのでしょうか?
答え:明確な定義があるわけではありませんが、「夏に流行する、発熱や発疹、咳や鼻水などを伴うウイルス性の病気の総称」と言っていいと思います。手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)などが代表的なものです。冬のかぜと同じように、手洗いをしっかりとすることが予防の基本です。
答える人 石橋涼子先生(石橋こどもクリニック院長)
現在は春や秋に手足口病が流行ることがありますし、咽頭結膜熱は夏と冬の2回の流行ピークがありますので、必ずしも「夏かぜ」とも言えなくなってきています。季節性が失われた要因のひとつは、冷暖房の普及で年間を通してウイルスの生息環境が一定に保たれていることだと考えられます。
手足口病とヘルパンギーナは「エンテロウイルス」とよばれるウイルスのうちいくつかの種類のものの感染で起きます(手足口病は主としてコクサッキーA16、A6、エンテロウイルス71、ヘルパンギーナはコクサッキーA群に分類される多くのウイルスや、時にコクサッキーB群・エコーウイルス)。エンテロウイルスは種類が多く、手足口病やヘルパンギーナ以外の症状を起こすものもたくさんあります。また手足口病は原因ウイルスによって少し症状がちがい、手足だけでなく全身に発疹が出たり、口内炎が少なかったりすることもあります。またどちらも症状が軽かったり、典型的でなかったりすることも多く、不顕性感染(ウイルスに感染しても症状が出ない)も少なくありません。
咽頭結膜熱は「アデノウイルス」への感染で起こる症状です。なぜ「プール熱」と呼ばれていたのかというと、鼻水や唾液、目やにに含まれたウイルスがプールの水を介して感染したことがあったからですが、プールでしか感染しないわけではありません。プールの水を介した感染は、水の塩素濃度が適切に管理されていれば防ぐことができ、今はむしろふつうのかぜと同様の飛沫感染や、ドアノブ・タオル・手すりなどについたウイルスが手指を介してうつる接触感染が主なものです。
これらはいずれも症状がなくなってもかなり長い間便にウイルスが出てくることがわかっていて、出席停止などの扱いで流行を防ぐ効果は限られています。予防としては手洗いをしっかりすることが基本です。またアデノウイルスは感染力が強く、接触感染での感染も多いので、患者とタオルを共用することは避けましょう。
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