人材を育てる分権化、簡素化、透明化
また経営者を育てるためには、とことん競わせることも必要だ。会社の中に競争がないと人は伸びないし、企業も成長しない。ただし、競争をさせて経営者を育てるためには、環境と制度を整えておかなければならない。そのキーワードは「分権化」、「簡素化」、「透明化」の3つである。これがカルビーの経営の軸であり、これをやらないと組織はよくならない。
人を育てるのに一番大事なことは権限委譲だ。権限を与えると、人は活力が出て成長するものだ。事業本部長には人事権を与え、成果を出すための組織を作らせている。権限を委譲する代わりに与えた利益目標に対しては全責任を負わせている。
また、「commitment&accountability(約束と結果責任)」という評価制度を導入している。年に一度、執行役員は社長と、部長は執行役員と、という具合に全員が直属の上司と前年度よりも高い目標を設定している。この目標の達成度合いで厳格に成果を査定し、賞与に反映させている。ここでのポイントは簡素化だ。目標設定の際は数値化が難しい部門であっても必ずデジタルに設定させている。
また、役職者らの目標と成果は社内データベースで公開しており、社員なら誰でも閲覧できる。透明化をはかり、公平・公正な評価ができるような環境を整えている。
こうした成果主義の導入や評価の「見える化」には抵抗もあったが、なぜ導入できたかと言うと、それらが正しかったからだ。制度改正によって不利益を被る人たちも、正しいことは理解できるし、言っていることが間違っていなければ、そのうちに聞く。「従来のやり方はこうだ」、「誰々さんがどう言っている」とか、そんなもの関係ない。正しいことを正しくやることが何より大事だ。
こうした環境の中で、部長以上はトーナメント方式で競わせる。目標を達成すればアップ(昇進)、達成できなければアウト(降格)だ。ただし、1回だけ敗者復活を認めている。幹部候補は他にもおり、チャンスを平等に与えることが大事だ。
最後は企業のビジョンを実現するためにベクトルを合わせ、一番成果を出した者がトップまで上りつめることになる。