2024年12月7日(土)

Wedge REPORT

2017年6月21日

冨山和彦の提言~Suggestion from Toyama
■今後は経営者の年齢を問わないことを、人事でハッキリと示せ
■経営者候補の運用は他の一般社員とは分け、社長直轄で行え
■経営者は「守り育てる」のではなく「修羅場」を経験させて育てよ
写真を拡大 冨山和彦(とやま かずひこ)経営共創基盤CEO 1960年生まれ。東京大学法学部卒。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、CDI代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。パナソニック社外取締役、経済同友会副代表幹事などを務める。
写真・TAKANORI ABE)

 東芝、シャープ、三洋電機といった日本を代表するメーカーが次々と没落していった。この30年の間にITの発展によるデジタル革命とグローバリゼーションが同時に起きたことで産業構造は大きく変わった。部品やシステムまでモジュール化が進み、川上と川下の一部の事業者だけが稼げる時代になった。

 にもかかわらず、日本の「モノづくり」企業のビジネスモデルは変わらず、ガラケーや液晶テレビのように、得意の「作りこみ」に固執した。稼げる可能性が著しく低いビジネスを捨て、次の分野に移るという迅速かつ果断な意思決定を、経営者が行えなかったことが大きな要因だ。

 特に東芝は半導体と原子力という、大きな資本投下を必要とするにもかかわらず、シナジーはなく、リスクも大きい事業を同じ企業内に抱えていた。私は長年、指摘してきたが、双方の価値が高いうちに事業売却するなり、スピンオフするなりしていれば、今の状況は招いていなかっただろう。これこそまさに経営者が決断すべきことだった。

 今後AI(人工知能)や5Gといった携帯通信網が進化していくことで、人命にかかわる医療や自動車(自動運転)の分野もこの波から逃れられなくなる。特にAIは人間が機械に指示してきたことを一部代替する技術であり、その影響は計り知れない。

 優秀な人材が集う日本の大企業が沈んでいくのを見るのは辛い。こういった事例を今回で最後にするには、日本においても、不確実な未来に対して次々と手を打てる経営者を、できるだけ多く生み出すことが必要である。

「あいつは出世ルートに乗ったな」
日本のエリート養成への疑問

 これまで日本の大企業はエリートを「守り育てる」ことで、経営者を育ててきた。「経営企画」「人事」「財務」といった管理部門を回り、メーカーならば米国法人の社長を務めたのち、経営陣の仲間入りをする経営者が多くいた。


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