2024年12月31日(火)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2024年11月11日

 開票前まで今回の大統領選挙は、大方の予想では、まれにみる僅差になり、結果判明までに少なくとも数日かかるのではないかとされていた。ところがハリスは、予想外の大差でトランプに敗れ、トランプの勝利が開票開始から1日も経たずに誰の目にも明らかとなった。

ハリス氏(右)の応援演説にも駆けつけていたバラク・オバマ元大統領。オバマ氏による米国社会の多様化がハリス敗因の一つとなったとも言える(AP/アフロ)

 それではなぜハリスは敗れたのだろうか。既に多くの識者により、インフレや移民問題など様々な要因が指摘されている。そこでここでは、ハリスがアフリカ系でありアジア系でもある女性候補であるという点に注目し、歴史的にマイノリティの政治家が米国社会にどれだけ受け入れられてきたかという視点から考えてみたい。

黒人女性差別の現状

 ミソジノワールという言葉がある。黒人女性に向けられた女性蔑視(ミソジニー)のことを指す言葉である。黒人女性は他の人種の女性に比べて殊更強い蔑視のまなざしを受けていることを表す語だといえよう。

 近年の例でよく引き合いに出されるのが、2018年の全米オープンテニスの決勝での、セリーナ・ウィリアムズと大坂なおみとの試合である。この試合でウィリアムズは、ポルトガル人のカルロス・ラモス審判によって、3つものペナルティーを科された。

 1ポイントを失う処分に抗議するが、その抗議も咎められ、結局1ゲームまでも失い、最終的に敗れている。しかも、1万7000ドルという高額の罰金を科されてもいる。

 日本では、審判に激してウィリアムズが興奮のあまり、勝者の大坂に敬意を払わなかった出来事として記憶されている。だが黒人女性差別という視点からみると別のものが見えてくる。ウィリアムズは、自分がその試合で犯したとされるのと同様の行為が男子の試合でもみられるもののこれほどの罰が与えられないとして、後に自分が女性であるせいでそのような扱いを受けていると主張した。

 この出来事は、対戦相手の大坂も黒人の父を持つために、人種の問題は入っていないかに見えた。しかし、後日この出来事を報じたメディアのなかには、大阪があたかも黒人とは関係がないように描き、一方でウィリアムズの黒人性を強調して描いたものが見受けられた。


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