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池田 瞬 (いけだ・しゅん)

経済ジャーナリスト・書評家

ビジネス・経済分野をカバーする現役ジャーナリスト。取材活動のかたわらライフワークとして書評執筆に長年取り組んでいる。国際問題、メディア、音楽など幅広いジャンルに関心がある。

 コロナ禍で停滞した消費活動を取り戻すという意味で「応援消費」という言葉がクローズアップされている。消費をすることを通じて苦境にある人や企業を支援する活動だ。

(yamasan/gettyimages)

 もともとは東日本大震災の時に、被災地支援のため各地の特産品を買って消費することや、現地を訪問するなどして地域支援を行う意味で使われ始めた。最近では自らの「推し」のアーティストや、お気に入りの店を応援することにも使われるようになってきている。

 本書『応援消費――社会を動かす力』(岩波新書)は市場戦略を専門とする経営学者がそうした新しい消費の態様を分析しながら、現代の消費社会がどのように変化してきたかを解明した。

 著者の調べによると、応援消費という言葉は、新聞では東日本大震災以前は使われていなかったという。筆者の経験でも1995年の阪神・淡路大震災の時にはそうした概念はなかったと記憶する。

 東日本大震災の時に応援消費という言葉が新聞やテレビのメディアで使われるようになった。その後、この言葉の出現頻度は2020年にコロナ禍に見舞われて以降、再び多くなり、時系列で並べると大きな山となって出てくるという。その消費のスタイルはさまざまである。著者はこう記す。

 現地での購入はもちろん、ネット通販、ふるさと納税、クラウドファンディングなどのサービスが応援消費の際に使われている。さまざまな対象に対し、さまざまな方法で消費を実践すること。この消費が対象を支援し、応援するものであるのならば、総じて応援消費という言葉で呼ばれることになる。

 こうした動きは情報技術の進歩も大きな役割を果たしていると著者は見る。阪神・淡路大震災の1995年以降、インターネットの急成長などメディアの世界では劇的な変化があった。それゆえ阪神・淡路大震災は、ボランティア元年ではあったが、応援消費元年にはならなかった。現在のように直接「神戸産」や「淡路産」の物品を手軽に買うことは出来ず、現地のボランティアに向かっていたからだという。

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