こうした動きに働きかけて、さらに新しい動きをつくり出していくのがマーケティングである。いたるところに交換を見出し、創り出す。応援することと消費することはこうした力でつながっていくという著者の以下の指摘は鋭い。
応援も含め贈与には、純粋な贈与としてあり続けることはできないというパラドックスがある。贈与のパラドックスは、常に交換との緊張関係を作り出し、今日ではいたるところに交換を見出し創り出そうとするマーケティングの広まりによって贈与の交換化が進んでいるのであった。応援することと消費することは、こうした力によって結びつけられていた。
変わりつつある現代社会での消費行動
応援消費は日本のみならず海外にもあり、本書はイギリスで「Eat out to help out」(外食して支援しよう) というキャンペーンがあったことを紹介している。外食にかかった費用の一部を国が負担する試みであり、消費を通じて「支援しよう」「助けよう」という動きを喚起した応援消費だったという。世界規模で同様な動きが生じた可能性がある。
著者は本書をこう結ぶ
新しい消費社会は世界中にすでに到来しているのであり、その到来はコロナ禍によっていよいよ日本でも目にみえるようになってきた。私たちが興味を持って捉えようとしてきた応援消費は、その象徴的な一例に他ならない。
私たちが生きるこの消費社会は、知らず知らずのうちに大きな動きが起きており、日常の生活もそうした動きに巻き込まれているといえる。現代の消費社会の変容を「贈与」と「交換」というわかりやすい形で解説した本書の功績は大きい。応援消費の背後に広がる社会的・経済的意味は実に深淵であり、読む者に新たな視座を与えてくれる力作である。
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バブル崩壊以降、日本の物価と賃金は低迷し続けている。 この間、企業は〝安値競争〟を繰り広げ、「良いものを安く売る」努力に傾倒した。 しかし、安易な価格競争は誰も幸せにしない。価値あるものには適正な値決めが必要だ。 お茶の間にも浸透した〝安いニッポン〟──。脱却のヒントを〝価値を生み出す現場〟から探ろう。
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