2022年12月9日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年10月21日

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滝田洋一 (たきた・よういち)

日本経済新聞社特任編集委員・テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』解説キャスター

1981年慶應義塾大学大学院修了後、日本経済新聞社に入社。金融部、チューリヒ支局、米州総局編集委員などを経て現職。2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。近著に『コロナクライシス』(日経プレミアシリーズ)。

KLAUS VEDFELT/GETTYIMAGES

 経済協力開発機構(OECD)が9月末に2023年の経済見通しを発表した。突然クイズで恐縮だが、日本、米国、英国、ドイツはA、B、C、Dのどれに当たるか。

 経済成長率 A=1.4%、B=0.5%、C=0%、D=マイナス0.7%

 ヒント。A、B、C、Dの23年のインフレ見通しは次の通り。

 インフレ率 A=1.98%、B=3.37%、C=5.89%、D=7.55%

 最初の経済成長率について、日本はCかDと思ったあなた。メディアの自虐的なコメントに漬かりすぎていないだろうか。日本のインフレ率が5%以上であることはまずない。じらさずに正解を示すと、A=日本、B=米国、C=英国、D=ドイツなのである。

 世界経済が逆風のなか、米欧ほど経済成長が下振れせず、インフレ率も比較的低く抑えられている。日本経済は健闘しているはずなのに、物価について不満を抱く人が少なくない。その理由はハッキリしている。手取りの賃金があまり上がらないからだ。

 8月の日米の消費者物価上昇率で絵解きしよう。物価上昇率は総合で米国が前年同月比8.3%、日本は3.0%。米国の高さ、日本の低さは鮮明だが、実は食料とエネルギーの上昇率をみると、米国2.0%、日本2.3%と日本の方がわずかに高いくらいである。

 問題は食料とエネルギーを除いたコア物価指数の上昇率だ。米国の6.3%に対して日本は0.7%にとどまる。米国は賃金の上昇がモノやサービスの価格に転嫁され高インフレになっているのに対し、日本は賃金が上がらないからコア物価指数も上昇しない。

 賃金が上がらないと家計の財布も厚くならず、経済の主力エンジンである個人消費も活発にならない。焦点を当てるべきは中低所得層のかさ上げである。世帯主の所得を低い方から高い方へ5分の1ずつ分けて、消費の変化をみれば、その意味がハッキリする。

 3~7月の勤労者世帯の消費支出は、コロナ禍前の19年3~7月に比べると1.6%減ったが、所得の低い方から5分の1に属する第1分位の世帯は5.7%減った(下表参照)。以下、第2分位5.5%減、第3分位3.7%減、第4分位4.3%減となっている。そうした中消費が増えたのは所得の高い方から5分の1に属する第5分位の世帯で、7.0%増加している。

所得の高い世帯だけが
コロナ前と比較して消費が増えている

(出所)内閣府の資料を基にウェッジ作成
※「定期収入五分位階級(*)」別における消費支出の変化。2022年3~7月の19年同期比
(*)「定期収入五分位階級」とは全ての世帯を5等分したグループで、 所得の低い方から順次、第1、第2、第3、第4、第5分位階級という 写真を拡大

 所得の高い世帯の消費が増えたのは、コロナ禍でたまっていた貯蓄が消費に向かったリベンジ消費だ。おかげで都心部の百貨店は有卦に入っている。その半面で日用品を取り扱うチェーンストアの売り上げはもたついている。所得の低い世帯に食料やエネルギー価格の上昇が直撃しているからだ。

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