今回は、求人サイトとメールを使い、「使える人材」を次々と獲得するベンチャー企業「もしも」の取締役管理本部長・堀直之氏を取材した。
もしもは2004年に創業し、06年からはアメリカで普及していたドロップシッピングサービスを日本ではじめて始めて、安定成長を続けるIT系ベンチャー企業だ。業績は、過去最大の売上を更新している。
「もしもドロップシッピング」サービスを使えば、初心者でも簡単に、安全に無料でネットショップ運営を始められる。現在、45万人の会員と36万点の商品数で、日本最大級の個人向けドロップシッピングサービスである。
好景気の中、大企業が採用意欲を高め、多くの中小・ベンチャー企業が「優秀な人材を獲得できない」と嘆く。そのような中、社員数30人ほどでありながら、独自の手法で「使える人材」をゲットする人事担当役員が、堀氏だ。
確信を持てない限り、採用はしない
私たちは創業(2004年)の頃から、少数精鋭であることに誇りを持っています。そこに社長以下、社員たちの強いこだわりがあります。「優秀」と思える人がエントリーしたとしても、内定を出すとは限りません。「この人は、大丈夫だ」と確信を持てない限り、採用しないのです。
社員の採用を行うときは、中途採用がメインになります。ターゲットとしてコストを最もかけているのが、30歳前後の即戦力です。あるいは、いずれは事業部の責任者として活躍をしていただきたい幹部候補です。
私は、管理部門の責任者として書類選考や会社説明会、1次面接から最終面接までに深く関わります。書類選考や1次面接は私が中心となり、判断します。「この人はいい。使える人だ」と思い、2次面接に進めても、そこで事業部門の責任者などが不採用と判断することがあります。
最終面接には、社長が参加します。私や事業部門の責任者がいい人材だと思っても、社長が認めないこともありえます。社長、事業部門の責任者、私と3者で合意がないと、原則として採用はしません。
会社の業績は伸びていますから、最近は「攻めの採用」をしています。私は特に求人サイトの「キャリアトレック」(㈱ビズリーチ)と「グリーン」(㈱アトラエ)をよく使います。グーグルなどでたくさんの転職サイトを調べた結果、この2つが特に優れていると思いました。
これらのサイトでは、転職志望者が職務経歴やスキルなどを登録します。このプロフィールを拝見すると、当社が採用したい人がほかのサイトよりもはるかに多い。私は、登録者のプロフィールをもとに人材をリストアップしました。昨年10月から12月の3カ月間だけでも、500人ほどになります。職種は、主にネット広告の営業や商品開発、ウェブデザイナー、システムエンジニアなどです。
多数の登録者から人を選ぶときのポイントは、ネット広告に関わる人を採用する場合、主に同業他社で営業などに関わった人であること。商品開発の人材を獲得するときは、自社で扱う予定の商品をすでにつくっているメーカーに勤務している人。リストアップした後、一人ずつに「スカウトメール」を送ります。同じ文面を一斉に送ることはしません。独自の文面を考え、それぞれの人に送ります。
3カ月間で500人に送り、返信が来たのは30~40人でした。その後、それぞれと会い、会社の説明などをします。昨年10月から12月の3カ月間で最終的に内定を出したのは、1人。500人から選び抜いただけに、抜群に優秀な人材を採用することができました。