今回は、昨年11月に記事として紹介した、ベテランの人事コンサルタント・森 大哉氏にあらためて取材をした。テーマは、「使えない上司はなぜ、淘汰されないのか」。
森氏は、コンサルタントとして20数年のキャリアを持ち、数百を超える企業の人事制度や組織改革などに関わってきた。全国各地での講演やセミナーにも飛び回る。現在は、コンサルティング会社・トランストラクチャの代表取締役を務める。
管理職を必要以上に性善説で見る
部下を潰してしまうような「使えない上司」でも、社長や役員から見ると、よく見えることがおそらくあるのでしょう。例えば、「彼は、明確な考えをもって指導している」「あの課長は、部下に丁寧に教えている」などと見えるのだと思います。
「管理職とは、こういう仕事をするものなのだ」とふだんから具体的に考えていないこともありえます。多くの会社は、非管理職から管理職に昇格させるとき、たとえば営業部なら稼いだ額など、個人としてのパフォーマンスだけをもとに、「この社員はいい!」と評価する可能性が高いのです。
漠然とした理由で昇格させているから、何かの問題が生じたときも、「どこにどのような問題があるのか」と分解して、具体的に考えることができない。結果として、選んだ管理職を必要以上に性善説で見ることになりかねないのでしょう。
私がコンサルタントとして接した社長や役員の多くは、管理職をおおむね信じているように思います。少なくとも、管理職を疑いの目で見る社長や役員は少ない。信じるあまりに、管理職に「丸投げ」になってしまいかねない場合もありえます。本来は、健全なる疑いを放棄することなく、「客観的に見ること」が必要なのです。
例えば、本部長の下で、非管理職の部下3人が次々と辞めたとします。そのとき、本部長が「あの3人はひどかった」と言えば、社長や役員はその実態を確認することもなく、ある程度は受け入れてしまうのだと思います。