今回は、上北沢自動車学校(世田谷区)のベテランの教習員で、労働組合委員長の斉藤孝行さんを取材した。
前職の自動車学校では「使えない上司」に仕え、理不尽な思いをした。その教習所は経営難となり、倒産。現在の職場に移り、労組の委員長として会社の改革を訴える。そのベースには、前職で味わった苦い思いがある。
俺がいないと、職場が成り立たない!
前職の役員や管理職は、既得権のうえにあぐらをかいていました。特権意識をもっていて、危機感がない。自分の仕事を手放さない。「俺がいないと、職場が成り立たない」と言わんばかりでした。ワークシェアをすることなく、自分の仕事だけをして、介入をさせない。部下を育てようとなんて思っていない。
倒産したのは、当然のことでしょう。当時の役員や管理職は、まさに「使えない上司」でした。結局、部下が路頭に迷い、苦しむのです。
私は、今の会社では機会あるごとに言っています。「役員や管理職は、部下を育成しないといけない」と。世代交代も進めていかないと、若い人も入社したいと思わない。
当社(上北沢自動車学校)は、都内47の指定自動車教習所の中で、昨年の「事故者率」が最も低かったのです。しかも、ゼロパーセント。事故を起こした人がいないのです。この業界で30年ほど働きましたが、こんな数字は聞いたことがありません。
「事故者率」とは、指定自動車教習所を卒業し、普通自動車の運転免許を取得した方のうち、取得後1年以内に人身交通事故を起こした方の占める割合のこと。警視庁が、都内47の指定教習所の卒業者の「事故」をすべて把握しているのです。
様々な教習所があります。「学費が安い」ことを売りにしているところもあります。当社は、「教官の質」が売りです。教官らの意識は高く、丁寧に教えます。「事故率」が最も低かったのは、卒業者が安全を心がけて運転していたことがもっとも大きいです。これからも、ぜひ、安全運転を心がけてほしいですね。
社内では、「教官らのレベルは高いから、世代交代をどんどんと進めましょうよ」と呼びかけています。一部では、煙たがれているかもしれませんが…(苦笑)。