“読書の秋”という言葉のもと、毎年、文化の日を中心にした2週間(10月27日~11月9日)が読書週間です。64回目となる今年の標語『気がつけば、もう降りる駅』を、書店や図書館などで、目にされた方も多いのではないでしょうか。本に関連したイベントもいろいろ開催されるので、本好き、読書好きには、なかなか忙しい時期でもあります。私もそのひとつに出かけて手に入れた絵本を、親子で開くのが目下の楽しみです。
『絵本は、育児書に勝るとも劣らない』と、大言壮語してスタートしたこの連載も、今回が最終回となりました。毎回、“こんな子・こんな時”を想定して本を紹介してきましたが、いろんな子どもがいるよう、大人もまたいろいろです。最終回は、絵本に登場する大人、特にお父さん、お母さんに注目してみようと思います。
トイレトレーニング中の親子が
救われた絵本
大人と子どもでは、同じところにいても、見えている景色や見ているものが違うと言われます。それは、体格や関心のありどころが違うことを思えば当然のことながら、忘れがちなことでもあります。今でこそ足が遠のいた公園も、子どもが小さいころは、毎日のようにでかけた場所です。いろいろな親子が集まる公園を舞台にした「こうえんで・・・4つのお話」(評論社)は、ひとつの出来事を、4人の人々―失業中の父親と娘、お金持ちの母親と息子―それぞれの見方で語るというものです。大人の高慢さや子どもの柔軟性、そして、ひとつの出来事も、立場や目線が変わるとこんなに違って見えるということを静かに示されて、愕然とさせられました。見るたびに、発見のある絵も含め、考えさせられることの多い絵本です。
「食べて、寝る」を繰り返し、座る、立つ、歩く、そしてしゃべるなど、成長していく赤ちゃんとの毎日は、明るい話題の方が多い日々かもしれません。そんな中、親子にとって最初のバトルと言ってもよいのが、「トイレトレーニング」ではないでしょうか? 過ぎてしまえば、あの大騒ぎは何だったのか・・・と、ほとんどの親が思うことですが、その渦中にあるときは、親の方が泣きたい気分の毎日なのです。だって、「まだオムツなの?」「どんな教え方をしているの?」と周りから責められるのは、むしろお母さんの方なのですもの。
ですから、「ぷくちゃんのすてきなぱんつ」(アリス館)を目にしたとき、ああ、これはお母さんの本だ! と思いました。ぷくちゃんのために、おかあさんがパンツを買ってきました。いよいよ、おまるに挑戦です。でも、簡単に出来るようになるわけがありません。何度も、失敗し、パンツが濡れてしまいます。その度に、お母さんはちっとも慌てず、怒らず、「だいじょうぶ。はい、おかわりぱんつ」と、次のパンツを出してくれます。この余裕とおおらかさ! 肩の力が抜けて、救われたようだったという感想を何度も耳にしました。子どもたちは、裏表紙に並んだ、たくさんの可愛いパンツからお気に入りを探すのが嬉しいようです。一緒に、楽しんで下さいね。