2024年5月1日(水)

こんな子 こんな時 こんな絵本

2010年11月4日

読むことを強要しない

 私の母は、少女時代、教科書以外の本を読むな、と言われ(土地柄もあったと思います)蒲団の中で隠れて本を読んでいるのが見つかると、それは怒られたものだと、笑い話のように言っていました。かつての悔しさや満たされない思いがあったせいか、読書家というほどではありませんでしたが、いつも本を身近に置く生活をしていました。そして、私にも、本を読ませたい、読書好きになって欲しいという思いがあったのでしょう。子ども時代、親からの誕生日プレゼントは本と、決まっていた時期がしばらくありました。誕生日が近づくと、地元の本屋さんへ母とでかけます。薄暗い店内、重厚な木製の本棚が、たくさんの本を並べて通路の両側にそびえていました。そこは特別な場所。どんな本があるのか、どんな本を買ってもらえるのか。うれしさよりも、“未知との遭遇”とでも言うべき、一大冒険に足を踏みいれるような感覚に、緊張したことを思い出します。

 プレゼントとなる本は、母が選び、決めることもあれば、何冊か選んだ中から、最終決定は任されることもありました。それにしても、母は何を基準に、何を参考に本を選んでいたのでしょう。ついに、聞きそびれてしまったことが残念です。それでも、かつて自分が読んで感激した本は読ませたかったようで、言葉巧みに誘導していたと思いあたる本が幾つかあります。それでも、読むことを強要された記憶はありません。ありがたかったと、今更のように思います。そして、共通の話題にできる本の話やそこから発展して娘時代の話を聞いた時間は、忘れたくない、温かな思い出となっています。

初めて「親」であり「子」である

 親の立場になって、否応なく子育てをしながら気づいたのは、自分がしてもらったこと、自分がされたことを基準にして判断していることの多さでした。私がうれしかったことや有難かったことをやり、いやだったことはしない。そうしていたら、わが子は別の捉え方をしていたことが、小さなことから大きなことまで、いろいろありました。抗議されたことも、泣かれたこともあります。これからも、たくさん出てくるのでしょう。でも、それは仕方のないこと。初めて“親”であり“子”をしているのだから、と考えることにしています。そして、絵本の中で出会った、親子やお父さん、お母さんに、励まされたり、ヒントをもらったりしています。

 「キスなんてだいきらい」(文化出版局)のパイパー・ポーは、かあさんにキスされるのが大嫌いです。喧嘩したり、怪我したりしながら、最後にはかあさんもわかってくれました。親子といえども、思いは別ですし、それを認め合わなければいけないことを教えてくれます。「オリバーくん」(ほるぷ出版)は、子どもの希望を活かし、親は冷静にならなければいけないことを思い出させてくれます。「すえっこおおかみ」(あすなろ書房)のおとうさんは、子どもをまるごと認めて、受け止めることの大事さを教えてくれます。「ちいさなヒッポ」(偕成社)のかあさんかば、決然としていて、頼もしい母親像です。

いつから一人で読めるようになる?

 年を重ねるごとに、超特急のように時間が過ぎていきますが、子ども時代は、なんとのどかで、一日一日がたっぷりとしていたことか! 子どもであることを満喫して、元気に過ごしていたように思います。「這えば立て・・・」の親心があるから、子育てが出来るとも言えますが、今は、先を急ぎ、結果を求めがちになっていないか? と自問自答することがあります。次のステージにスムーズに移行するためにも、今の状況を納得するまで味わう必要があるように思います。「読みきかせ」から「一人読み」へ、受動態から能動態への移行問題のヒントも、このあたりにあるのではないかと思っています。


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