2024年12月10日(火)

40代からの脳力の磨き方

2009年2月27日

脳機能低下を最小限に抑え、脳力アップを

 これまでお話したように、脳機能の低下については、年とともに体力が低下するのと同様、生物の宿命として避けられないといえます。

 しかしそれは、脳全体をコンピュータにたとえると、ハードの部分が使用年数とともに古くなっている状態と同じです。新しい機種には買い換えられないけれど、きちんとメンテナンスをすれば、現状を維持して使い続けることができます。脳の最大酸素摂取量を増やすことは難しいのですが、有酸素運動を行なうことで酸素を十分に体に取り入れることや、生活習慣を改めて血圧を低く抑えることで脳梗塞を防ぎ、脳機能の低下を最小限に抑え、一部の働きを少しよくすることはできます。

 そうしてハード面をしっかりケアしていれば、年をとってもソフト面にあたる脳力をアップさせることはまだまだ可能なのです。それには、よくいわれるように、脳をどんどん使って神経細胞(ニューロン)とそのつぎ目(シナプス)を増やしていくことが最も有効な方法です。

脳は使えばどんどんよくなる!

 脳は、新しいことを学習すると、神経細胞からシナプスがどんどん枝分かれして別の神経細胞につながり、新しい回路を作ります。同時に新しく神経細胞が作られ、働くようになります(図3)。

 新しい回路がたくさんできれば、それだけ情報伝達が早くなり、脳の働きはよくなります。ひとつの細胞には数万個ものシナプスがありますから、脳を使えば使うほど神経細胞が増え、シナプスはどんどん神経細胞同士をつなげ、記憶力も高まっていきます。しかし反対に、脳を使わなければ、使われない回路のシナプスは消えてなくなっていきます。忘れるという現象は、その部分の神経細胞とシナプスがなくなったということです。

 それを、「年をとってきた証拠だから」とあきらめてしまえば、脳機能の低下とともに、脳力までも衰えていくばかりです。放っておけば、認知症の危険性も高まります。それを防ぐためにも“脳は使えばどんどんよくなる”という言葉を励みに、できるだけ神経細胞とシナプスを増やし、脳力を高めていく努力が必要になります。

 では、そのためには具体的に何をしたらよいのでしょう? それについてお話する前に、基本的な脳のしくみと機能について、改めて確認しておきましょう。

脳の領域ごとに違う働き

 図4のように脳は、大きく3つの部分、大脳、小脳、脳幹に分けられます。このうち、大脳が脳全体の重さの80%を占め、脳のいちばん外側を覆う大脳皮質には、神経細胞(ニューロン)がびっしり張り巡らされています。海馬は、大脳皮質の下にある古い皮質のなかにあります。

 脳の表面にある大脳皮質は前から順に4つの領域、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられます。さらに、脳は52の領域に分けられ、それぞれ番号がつけられています(図5)。これは20世紀の初めごろ、ドイツの解剖学者のブロードマンが、神経細胞の構造の違いを分析してつけたものです。当時はまだ、それぞれの働きまではわかりませんでした。しかし最近は、MRIの発達により、どの領域が体のどの部分と関係して、どんな働きをしているかなど、詳しくわかるようになってきています。


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