ドライアイスと「ご遺体」の関係
人は死んでしまっても、この世の人に及ぼす。「ご遺体」などは最たる例だ。都市部では、時期や場所によるが、火葬場が埋まり「数日待ち」ということもある。都市の過密した人口に対し、火葬場の絶対数が足らないのだ。だが、火葬場を増やそうとすると、反対運動が起こることは避けられない。また、今後、人口が減ることを考えると、闇雲に建てるものでもないとなる。
人は心臓が止まると、血液、体液行き渡らなくなり、体温が下がる。いわゆる「冷たく」なる。そして、筋肉は硬直を始める(死後硬直)。この時は、体細胞に必要な酸素、栄養等が運ばれなくなっている状態であり、体細胞自体がやがて死ぬ。この死んだ細胞は、空気中のバクテリア、菌類の好物。奇跡でも起きない限り、腐敗していく。
細胞が死ぬのを止めることはできない。このため、遺体の腐敗を防ぐには、低温下に置くのがいい。しかしただ単に冷蔵庫に入れると、水分が飛ぶ。皮膚は水分が抜けると黄変する。
冷凍保存のため現在もっとも多く使われているのは「ドライアイス(固体二酸化炭素)」。実はドライアイスの大半を、葬儀業界が使っていることをご存じだろうか? さらにいうとドライアイス、総需の98%を韓国から輸入している状態だという。末端価格で300〜500円/kg。ご遺体を保存するには、10kg/日必要だそうだ。3000〜5000円/日かかる計算になる。
オープン冷蔵庫と評すべき、『メモリアルベッド』
これに対し、新しい提案をしている商品がある。ドウシシャの「メモリアルベッド」がそれだ。初期投資に100万円が必要だが、ランニングコストは約143円/日と、ドライアイスを使うよりも大幅に安い。
見た目は、直方体の突起が4つならんだベッド。この4つの直方体は何であろうか? 「ペルチェ素子」だ。ペルチェ素子は、その原理を発見したフランスの物理学者 ジャン=シャルル・ペルチェから、その名前をもらっている「熱移動素子」だ。家電では、小型のワインクーラー等に使われている。ただこのペルチェ素子、素子単体ではそれほど冷却力が強いものではない。そこで特殊加工したアルミブロックや、ヒートシンク、ファンなどを組み合わせる(特許技術)ことによって冷却能力を最大に引き出している。
その4つのアルミ製冷却ブロックの上にご遺体を乗せると、ご遺体は背から冷やされることになる。オープン冷蔵庫とも言える、このメモリアルベッドだが、非常に理にもかなっている。
それは背から冷やすことだ。体内を循環しなくなった血液を含む体液は、低いところ、つまり背部側に集まる。体液は栄養豊富。仰向けの場合、腐敗は背部側から始まるそうだ。メモリアルベッドは、ペルチェ素子でダイレクトに背を冷やすので、ご遺体の腐敗しやい方からをケアしていることになる。
背部側からの冷却により内臓などのコア部分をピンポイントで冷却することで腐敗進行を著しく遅らせることができているそうだ。納棺師も、生前の状態を再現しやすく、遺族からの満足度も高いという。