胡錦濤訪米の裏側で
ここで話が中国につながってくる。読者の皆さんが今月のコラムを読む頃には、中国の胡錦濤国家主席が国賓としての公式訪問のためにワシントンに到着するところか、訪問を終えて立ち去ろうとしているだろう。
胡主席は21発の礼砲で迎えられ、公式昼食会(どうやら晩餐会ではないらしい)に招かれ、氏が切望する派手なテレビ映像が北京で流れることになる。
その頃までに間違いなく終わっているのは、ロバート・ゲーツ国防長官の訪中だ。プロフェッショナルな関心を必要とする困難を極める重大な安全保障問題が多々あるにもかかわらず、これはたった2度目の訪中だった。
一部のアナリストは、胡主席が訪米に向けて友好ムードを維持しようとあらん限りの努力を払っているため、人民解放軍は少なくとも、大半の国で標準的なタイプの軍事対話を受け入れるふりをするよう「命令」されたと推測している。
人民解放軍の態度は変わったのか
一方で、どれほどかすかであれ、人民解放軍が次第に、アジア地域で長年必要とされてきた米中両軍間の緊張軽減・信頼醸成措置がもたらす相互利益に対する理解を深めつつあるとの希望を抱くアナリストもいる。
いずれにせよ、アナリストが全員同意するのは、人民解放軍がここ数年間、アジアの近隣諸国に対する態度だけでなく、特に米国に対して攻撃性を増しており、ゲーツ長官その他の米国の国防専門家との率直で真剣なハイレベルの対話はとうに機が熟している、ということだ。このため、こうしたアナリストたちは、人民解放軍が徐々に開放的になることを受け入れ始めていると期待している。
ホワイトハウスの情報「操作」
今月のコラムのテーマの観点からすると、たかだか1カ月ほど前と比べても今何が変わったかと言えば、「難しい」問題の長い、長いリストにもかかわらず、オバマ政権が胡主席および中国と公然と対立しない決意を固めたように見えるようメディアの報道を「操作」する姿勢をホワイトハウスが明々白々にしていることだ。
長いリストには、北朝鮮とイランに関する問題、特に中国が交渉に手を貸し、支持票を投じた国連制裁を故意に執行しない態度や、日本と東南アジア諸国に対する人民解放軍の攻撃的な姿勢、極めて感情的な「通貨ミスアラインメント」問題を含む貿易問題がある。
ホワイトハウス高官は、ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙、そして筆者に向けた「バックグラウンド・ブリーフィング」で、オバマ大統領が中国の誠意や一連の問題解決に向けた胡主席の決意に「不信感を抱く」ようになったという報道には一縷の真実もないと強調した。
また、こうした情報源は聞き手が笑おうものなら怒ったふりをする。だが、彼らの真意は明白だ。オバマ大統領と閣僚たちは人事を尽くして、米中関係を極力冷静かつプロフェッショナルな態度でマネージしていく決意を固めている、ということだ。