2024年11月26日(火)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年1月15日

大統領も、議会の手前…

 もちろん、これは称賛に値する目標だが、「様々な事実」が行く手を阻み続ける。また、非公式な会合では、短時間とはいえ、オバマ大統領がこうした「難しい」問題すべてに少なくとも「触れる」のを避けないことは絶対間違いない。

 というのは、言うまでもなく、米国は北朝鮮、イラン問題に関する中国の手際にひどく不満を抱いており、経済的に正当化できるような為替レートに人民元を上昇させるという1年越しの約束を中国が苦痛なほどゆっくりとしか実行しないことに猛烈に腹を立てているというのが現実だからだ。

 このことが、今月のコラムに残された米中関係の最後の要素につながる。すなわち、中国と米議会の関係をマネージすることだ。

 日本や欧州のような議会民主制を取る国では往々にして十分理解されないことだが、米国の政治制度は大統領を外交政策の責任者に据えておきながら、いざそうした政策に積極的かつ公然と影響を与えようとする時には、議会には本当の威力があり、常に言い分が多々ある。

 それは、議会は「監視」という憲法に守られた権限(まさしく文字通り、行政府がやることすべてをきめ細かく「監督」する権限)を持つだけでなく、文字通り、行政府が使う1セントをも承認または拒否する権限を持っているからだ。

 共和党が下院の過半数を握った今、これは中国、北朝鮮、イラン、中東、人権等々といった問題すべてが、率直に言って難しい批判にさらされることを意味する。こうした批判は往々にして激しく、しかも大抵、大統領に恥をかかせるタイミングを狙ってくるだろう。

議会が中国にいろいろ圧力

 胡主席との首脳会談時に、下院外交委員会で例えば中国の「人権問題」に関する派手な公聴会が行われたり、ほかの委員会が深刻な経済・貿易論争に真剣に取り組もうとしたりしても、驚かない方がいい。

 我々は現時点では、ひとまず、中国に関する法律がたくさん制定されることは予想していない。しかし、共和党が支配する下院でさえ、通貨についてしびれを切らし、貿易助成金をうまく出せるよう米国の法律を変える法案を復活させる可能性は排除できない。これについては、引き続き注目しておこう。

 結局、議会は様々な問題の監視という形で「プレッシャー」を与えることに専念し、オバマ政権の成績がどうか、中でも特に米通商代表部(USTR)と商務省の執行担当者が中国のコミットメントと世界貿易機関(WTO)の規制を中国側にしっかり遵守させるうえで、どれほど「タフな」姿勢を貫けるかという点を監視していくのではないかと我々は見ている。

 実際、中国との間で貿易の執行を巡る「戦争」がエスカレートする本物の「リスク」がある。米国企業の間では、中国の政策は意図的に、中国国内で事業を行うことを「許される」見返りに米国企業が自社の未来(特許や技術、研究開発等々)を明け渡さざるを得なくなるよう設計されているという、正当な根拠がある懸念が高まっているためだ。

米産業界も、中国に厳しい

 共和党も民主党も同様に、「自主開発」に関する中国の攻撃的な政策(中国政府調達の対象製品を、中国国内で開発されたものに限るとする方針のこと)や、知的財産権のお粗末な法執行といった諸々の問題は、オバマ政権が今後数カ月で非常に厳しく評価されることになる「要処置事項」だという点で同意している。

 我々は保証できる。オバマ大統領と胡主席は公の場ではカメラに向かって微笑んでいるかもしれないが、ドアが閉まった時には、オバマ大統領は確実に、政権の残り2年間で米国が期待していることを胡主席がはっきり理解してワシントンを去るようにするはずだ。

 というわけで、差し当たりこの辺で話を終え、状況がどうなったか来月のコラムで再考することにしよう。

 おっと遅くなったが、A Happy New Year!!

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