2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月15日

 ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、2018年2月14日、米下院軍事委員会において米太平洋軍の兵力態勢に関する公聴会で発言した。そのうち、北朝鮮に関する部分を紹介する。概要は以下の通り。

(iStock.com/Bika_Ambon/towfiq/publiy/Nerthuz/ChristianChan)

 北朝鮮の脅威はますます深刻なものになっている。国際社会の非難や国連安保理の制裁にもかかわらず、北朝鮮の核と弾道ミサイル技術は向上した。北朝鮮は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)は米国のみを、中距離弾道ミサイル(IRBM)はグアムのみを標的にしていると述べた。ミサイル実験のうち2回は日本の領土の上空を通過し、不必要に日本国民を危険にさらした。北朝鮮は2017年9月、地下施設で6回目、最大規模の核実験を行った。

 北朝鮮は核・ミサイル技術を向上させ、昨年11月29日のICBMの実験後、金正恩は、核保有国宣言をした。その性能について疑問視する声もあるが、彼の言動と現実のギャップが縮まっていることは事実である。北東アジアの同盟国である韓国と日本は既に北朝鮮の射程に入っていたが、いまや米国本土も射程に入ろうとしている。太平洋軍及び国防省は、国務省が主導している大統領の最大限の圧力を支持する。誰も北朝鮮との紛争は望まないが、米国と同盟諸国は、いかなる軍事的事態にも対処できるようにしておかなければならない。

 2017年の国連安保理決議2321、2356、2371、2375、2397を超えて、国際社会は北朝鮮を外交的、資金的に孤立させてきた。ティラーソン国務長官らの努力もあり、各国は北朝鮮との貿易を削減し、北朝鮮の海外資産の凍結等を行なった。特に中国の役割は重要で、中国は北朝鮮の貿易の90%以上を占める。中国は国連安保理決議を履行したが、まだ中国には出来ることがあり、行うべきだと思う。ロシアの貢献も十分ではない。制裁が効いてきているにもかかわらず、北朝鮮は軍拡を続け、国民を苦しめ、指導部のみが良い思いをしている。

 北朝鮮の過剰な通常兵力も、金正恩政権の強圧的行動を可能にしている。2450万人という人口世界第52位の北朝鮮が約120万人という世界第4位の兵力を有している。対称的に、世界第53位の人口の豪州は6万人以下の兵力である。北朝鮮は長距離ロケットや大砲の開発を自慢し、短距離ミサイルは非武装地帯を超えて韓国及び在韓米軍に向けられている。これらのシステムで北朝鮮は化学兵器、生物兵器を運搬することも可能だ。また、良く訓練され規律正しい特殊部隊が北朝鮮にはある。更に、北朝鮮は、海軍に長距離対艦ミサイルを配備し、将来的には潜水艦発射型ミサイルを持とうとしている。

出典:‘STATEMENT OF ADMIRAL HARRY B. HARRIS JR., U.S. NAVY COMMANDER, U.S. PACIFIC COMMAND BEFORE THE HOUSE ARMED SERVICES COMMITTEE ON U.S. PACIFIC COMMAND POSTURE’February14,,2018 http://docs.house.gov/meetings/AS/AS00/20180214/106847/HHRG-115-AS00-Wstate-HarrisJrH-20180214.pdf)


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