2024年12月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月6日

 2018年2月2日、米国防総省は、「米国の核態勢見直し(NPR)2018」を発表しました。その要点を以下に紹介します。

(iStock.com/ChiccoDodiFC/Stocktrek Images/ Volodymyr Horbovyy/AndreyPopov/ Titova Elena)

 米国は、自国や同盟諸国の安全保障を第一に考え、将来世界から核兵器が廃絶されるまでは、近代的で柔軟な核能力を有する重要性を強調する。

 前回の「NPR2010」以来、核の脅威は明らかに増大した。ロシアや中国は、保有兵器に新型の核能力を追加し、宇宙やサイバー空間を含め、一層攻撃的な行動をとるようになっている。北朝鮮は国連安保理の決議に違反して核兵器やミサイル開発を続けている。イランは包括的合同行動計画において自国の核開発の制約に合意した。しかし、同国は、その気になれば、1年以内に核兵器を開発するために必要な技術能力を保持している。

 米国の核能力は、核・非核攻撃の抑止に不可欠である。通常戦力だけでは、自国及び多くの同盟国を安心させるには不十分であるし、米国の拡大核抑止は核不拡散にも貢献している。ただ、米国の核戦力は、核・非核攻撃の抑止や同盟諸国等への安心提供のみならず、抑止が失敗した場合の米国の目標達成や不確実な将来に対する防衛手段にもなり得る。

 米国は、欧州、アジア、太平洋地域の同盟国を守るという拡大抑止の強い決意を有している。米国は、極端な状況においてのみ核兵器の使用を考慮する。抑止ができなかった場合、米国は、米国や同盟国等の損害を最小限に抑え、最良の条件で紛争を終結させる努力をする。

 現在の戦略核の三本柱は、1980 年代かそれ以前に配備されたものだが、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を装備した潜水艦(SSBN)、陸上配備型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、無誘導爆弾及び空中発射式巡航ミサイル(ALCM)を運搬する戦略爆撃機から構成される。

 今、低出力オ プションを含む柔軟な米国の核オプションを拡大することは、地域侵略に対する信頼性ある抑止力の維持にとって重要である。それは、核のハードルを引き上げ、潜在的な敵対国が限定的核エスカレーションにより優位になるのを防ぎ、核使用の可能性を低減する。国防総省と国家核安全保障庁は、敵対国の防衛を突破することが 可能な迅速対応を保証するための低出力SLBM弾頭を開発する。この短期的措置に加え、米国は長期的に核装備 SLCMを追求する。SLCM は必要とされる非戦略的な地域プレゼンスを提供する。

 過去数十年、米国の核兵器インフラは老朽化と資金不足の影響を受 けてきた。現在は、戦略物資と核兵器の構成部品を生産するために必要な物理的インフラへの資金増強を速やかに行う必要がある。

 米国は、核装置を獲得・活用するテロリストを支援する国家、テロリスト・グループ等を認めない。核拡散防止条約(NPT)は核の拡散防止体制の礎石である。同条約外で 核兵器を追求しようとする者に代価を強いる国際努力を強化する。北朝鮮がNPT に直接違反し、数多くの国連安保理決議に反対して、核保有の道を追求している。北朝鮮以外では、イランの挑戦が浮上してきている。

 米国は包括的な核実験禁止条約の批准は求めないが、包括的な核実験禁止条約機関準備委員会や国際監視システム、国際データ・センターへの支持は継続する。米国は、核兵器を保有する全ての国に核実験の 一時停止を呼びかける。ロシアは一連の軍備管理条約に違反し続けている。ロシアの最も重要な違反は、中距離核戦力全廃条約に関する違反である。米国は、潜在的な結果が米国や同盟国等の安全保障を改善するならば、さらなる軍備管理交渉を受け入れる用意がある。

出典:Office of the Secretary of Defense ‘Nuclear Posture Review 2018’ February 2018,
https://media.defense.gov/2018/Feb/02/2001872891/-1/-1/1/EXECUTIVE-SUMMARY-TRANSLATION-JAPANESE.PDF)


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