2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2011年6月21日

福島の人々が置かれた過酷な環境。政府・東京電力の事故対応のおそまつさ。
「脱原発」の声が高まるのも無理はない。
しかし、国民を不安にさせているのは、事故対応でも安全対策でも賠償スキーム策定でも責任逃れを続ける政府の姿ではないか。原発を抱える地元自治体は、定期検査後の再開にゴーサインを出せなくなっている。
このままでは、来春にはすべての原発が止まる。全国を電力供給不安や価格上昇が襲い、日本経済は想像以上のダメージを受けるだろう。政府は前面に立ち、原発を動かすべきだ。

  6月14日に閣議決定された原子力損害賠償支援機構法案。議論の場は国会に移るが、この法案で示された賠償スキームをみると、福島第一原子力発電所事故で東京電力をスケープゴートにしようとする政府の責任逃れ体質が現れている。

 まず、今回のスキームを図式化すると、以下のとおりとなる。

政府が前面に出ない賠償スキーム(注)①、②、③の順に充当される。
(出所)各種報道資料よりウェッジ作成
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 概括すれば、数兆円とも言われる賠償額は、東電を中心に、原発を有する他の電力事業者も負担する。東電は毎年の利益から安定供給のための投資額を除いて賠償に回す。政府の役割は必要な時に現金化できる国債の交付だが、身を削るわけではなく、いずれ国庫に返済される。東電を生かさず殺さず、「賠償金返済機関」として存続させるスキームといえる。

 巷間ではこのスキームに、東電解体まで踏み込めとの声があがる。後述するが、これらは、東電のみを悪者にしようとする政府のプロパガンダに乗せられた感情論の側面が強い。

 スキームは1961年に制定された原子力損害賠償法(原賠法)に準拠する。万一、原発災害を生じた場合の賠償措置を定めた法律だ。図2の横軸は災害の範囲を、縦軸は損害額を示す。原賠法は事故を起こした電力事業者の無過失無限責任をうたうが、範囲が「異常に巨大な天災地変」であれば免責となる(第3条ただし書き)。

原子力損害賠償制度の日米比較(注1)原賠法第17条には「政府は、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずる」(要約)とあるだけで、損 害賠償額を国の責任で負担するかどうかがはっきりしない。
(注2)米国のプライス・アンダーソン法には、事業者に加入が義務付けられたプール保険(強制保険)と、3.75億㌦を超えた損 害賠償が必要となった場合に原子炉1基あたり最大1.2億㌦を事業者から徴収する遡及保険があり、それを超える分は連邦議会 が完全賠償のための必要な措置を講じることが定められている。
(出所)各種資料よりウェッジ作成
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