電話がなければ始まらない
新生活にあたっては日本でも同じだが、まずは、電気、ガス、インターネットの立ち上げだ。幸い水道料金は家賃に含まれており(つまり、水とお湯は使い放題。海外ではこういうケースは多いらしい)、電話も日本の某キャリアがアメリカで比較的安く携帯電話サービスを提供しており、東京で契約でき、到着時から使うことができた。実は電話が最初から使えたことが結果的にかなり幸いした。電話がなければ何も始まらないし、いちいち公衆電話など使っていられない。(そもそも日本と同じで公衆電話が街中にとても少ない!)。
電気、ガスは独力で会社に電話してなんとか新規口座(アカウント)を作った。最初から電気もガスも使えるのだが、1か月ぐらいたって料金の請求書(Bill)がこないと、料金未払いでサービスを止められてしまうため、実のところちゃんとアカウントが設定できているのか、1か月後が心配ではある。
難航したのはインターネットの回線だった。いまやネットは生活基盤の一つであり、水や電気なみに死活的に重要なインフラだが、申し込んでも工事の予約がなかなか取れない。
不動産屋の助力を得て、ようやく回線工事の予約をとれたのが5日後。しかも午後2時から5時の間にくるという。時間を無駄にせずいろいろやりたいのに、まるで悠長な話だ。そして実際に工事のお兄さんがきたのは夕方の5時半だった。作業自体はほんの20分ぐらいで終わる簡単なものだが、工事のお兄さんによると、独立記念日の休暇前ということで、工事が混み合っていて夕刻の最後の時間帯になったとのこと。世界に冠たる先進国なのに何事も一度では解決しない。時間をしっかり守り、仕事も丁寧な日本のサービスがいかに素晴らしいかを改めて思い知った。
海外生活で必須のID
アメリカに来て身につまされたのは身分を証明するものが日本のパスポート以外に何もないという現実だった。まずは大学のIDカードだと思って、これからお世話になるハーバードのIDオフィスに行き、何はともあれカードを作った。
日本の免許証のように写真を撮ってもらい、IDカードを作るのだが、確認しろと言われてみると、疲れ切ったおやじの顔がモニターに出ていて、自分でも嫌になってしまった。さすがにこれではまずいと思い、写真を撮り直してもらったので、最初よりはまだましになったが、ちょうどサマースクールのシーズンにあたるため窓口も混み合っており、係員もいらいらしているのか、事務的な対応に閉口する。だがIDをもらえないと何も始まらないので、我慢、我慢と耐えるしかない。
ようやくIDができたので、次は難航が予想される銀行口座の開設だった。覚悟を決めて、店舗数の多い近所の大手銀行に行き、口座を作りたいと申し出る。しばらく待たされた後に、個室に通されて、いろいろ話を聞かれた。身分証明書を示した後、どんな口座にするか、どれぐらいの資金を常に預けておけるのかなどをいろいろ聞かれた。その結果を踏まえて、テンポラリーカードが発行される。
この間約2時間。説明している方も大変だろうが、英語で自分を説明しないといけないこちらはもっと大変だ。それでもなんとか口座ができたので、ようやく社会人らしい生活ができるようになった。アメリカでの信用履歴がないのでクレジットカードはすぐには作れないのだが、それでもキャッシュカードが発行されたのでデビットカードとして使え、多額の現金を持ち歩かなくても良いのがありがたい。