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2019年7月20日

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坂元茂樹 (さかもと・しげき)

同志社大学法学部教授

1950年生まれ。法学博士。専門は海洋法、国際人権法および条約法。近著に『日本の海洋法政策と海洋法』(信山社)など。

 しかし、反捕鯨国の執拗(しつよう)な反対により、この検討はなされず、結果として商業捕鯨モラトリアムが維持されている。附表の修正には加盟国の4分の3の賛成が必要だが、捕鯨支持国(40カ国)と反捕鯨国(48カ国)が拮抗(きっこう)している状況(下表)でいまだ実現していない。

(出所)水産庁資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 そこで1994年にRMPが採択されたが、反捕鯨国は、今度は捕鯨活動を監視する監視取締制度を含む改訂管理制度(RMS)策定が商業捕鯨再開の条件だと主張し始めた。そこで、RMS策定の作業が進められたが、2006年の第58回IWC総会でRMS交渉の無期限停止が突然決定された。その結果、商業捕鯨再開の道は遠ざかることになった。

 日本の調査捕鯨は、鯨類の資源量を科学的に調査し、資源が豊富な鯨類資源についてはIWCが決定したRMPに基づき捕獲枠を算出・設定しようとの目的で行われていた。しかし、反捕鯨国は、鯨は絶滅のおそれのある種であると主張し、保護が必要であるとして譲らない。

 13年からIWC日本政府代表を務めた森下丈二氏によれば、どのような科学的データや法的議論を重ねても、反捕鯨国は「ゼロ頭」以外は認めないとの立場を維持している。交渉による妥協の余地を認めないゼロトレランス(不寛容)方式を採用しているのである。

脱退で問題は終わらない
潜む国際訴訟リスク

 18年9月、第67回IWC総会で、日本はIWC正常化のための最後の提案(捕獲枠を提案する持続的捕鯨委員会の新設など)を行ったが、否決され、昨年の脱退の決定に至った。これに伴い、日本は今後、国際訴訟リスクに備える必要がある。

(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 日本は国連海洋法条約の締約国である。同条約第65条は、「いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と規定している。

 IWCを脱退し、日本が計画しているIWC科学委員会におけるオブザーバー参加という形だけで、本条にいう「適当な国際機関を通じて活動する」という要件を満たすかどうかという問題がある。また、そうした参加が「管理及び研究」のための協力義務を果たすとしても、「保存」のための協力義務をはたしているかが問題になる。

 第65条にいう「適当な国際機関」は複数形で示されており、IWC以外にも、「保護主義」に向かうIWCへの不満から、ノルウェーらが設立した北大西洋海産哺乳動物委員会という国際機関がある。このように日本が新たな国際機関を作ることも可能だが、無駄な政策コストがかかり、IWCと無用な緊張関係を生じさせるだけで得策ではなかろう。

 さらに、同条約第194条5項は、締約国に、「希少又はぜい弱な生態系及び減少しており、脅威にさらされており又は絶滅のおそれのある種その他の海洋生物の生息地を保護し及び保全するために必要な措置を含む」ことを義務付けている。ワシントン条約における絶滅危惧種のリストⅠに掲載のうち、鯨類十種について日本は適用を認めておらず、その中には日本が商業捕鯨の対象としているミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラなどが含まれている。この点でも今後国際的な議論の中でどう対応していくべきかが問われる。

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