海洋法条約は、その紛争解決手続で仲裁裁判を認めており、反捕鯨国が日本の商業捕鯨は海洋法条約に違反すると主張して、国際裁判に訴えるリスクがある。日本の商業捕鯨は日本の領海・EEZで行われるため、一見すると、他の国に何らの被害も与えていないのだから、他の国には訴えの利益がなく、訴訟の当事者適格がないと思われがちだが、しかしこうした議論はもはや国際場裏では通用しない。
疑問符つく事業継続性
より大きな国益の追求を
14年に日本が敗訴した南極捕鯨事件判決で、国際司法裁判所は、海洋法条約のすべての締約国は、条約に基づく義務及びそれから派生する制度を遵守することに共通の利益をもっているとの豪州の主張を認め、同国の当事者適格を容認したからである。
仮に訴えられた場合、日本としては、「沿岸国は、排他的経済水域における生物資源に関する自国の主権的権利又はその行使に係るいかなる紛争についても、同節の規定による解決のための手続(仲裁手続)に付することを受け入れる義務を負うものではない」との規定を使って、仲裁裁判の管轄権を否定して日本の正当性を主張することになろう。
今回の日本の措置について国際協調や国際法遵守の立場を揺るがすものであるとの批判がある。たしかに、日本が行っているサンマやクロマグロ類の資源管理の交渉に影を落とすおそれや、鯨肉の消費が落ちている中で、商業捕鯨の再開といっても事業の継続性に疑問符がつく。
日本はこれまで、近隣諸国との領土紛争はじめ一貫して国際法遵守の必要性を主張し、世界にその姿勢を示してきた。今回の件がきっかけで、こうした立場に誤解を生じさせないよう、政府は対応していく必要がある。そしてより大きな国益を追求する上での国際法戦略が今後も求められる。
■ムダを取り戻す経営 データ偏重が摘んだ「創造の芽」
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今こそ共感や直観による経営を取り戻せ――野中郁次郎(一橋大学名誉教授)
COLUMN 組織内の多様な「物語」が新しい価値を生み出す――やまだようこ(京都大学名誉教授)
Part 2 低成長を脱する処方箋
潤沢な「貯金」を使い未来への「種まき」を――中島厚志(経済産業研究所理事長)
Part 3 逆境を乗り越えた経営者の格言
・「ビジネスモデルの変革なくして企業に未来はない」――坂根正弘(コマツ顧問)
・『そろばん』より『ロマン』 大事なのは『志』を持つこと」――金井誠太(マツダ相談役)
・「階層を壊して語り合う 自由闊達な風土が付加価値を生む」――小池利和(ブラザー工業会長)
Part 4 株主資本主義がもたらす弊害
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