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2019年7月20日

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坂元茂樹 (さかもと・しげき)

同志社大学法学部教授

1950年生まれ。法学博士。専門は海洋法、国際人権法および条約法。近著に『日本の海洋法政策と海洋法』(信山社)など。

 海洋法条約は、その紛争解決手続で仲裁裁判を認めており、反捕鯨国が日本の商業捕鯨は海洋法条約に違反すると主張して、国際裁判に訴えるリスクがある。日本の商業捕鯨は日本の領海・EEZで行われるため、一見すると、他の国に何らの被害も与えていないのだから、他の国には訴えの利益がなく、訴訟の当事者適格がないと思われがちだが、しかしこうした議論はもはや国際場裏では通用しない。

疑問符つく事業継続性
より大きな国益の追求を

 14年に日本が敗訴した南極捕鯨事件判決で、国際司法裁判所は、海洋法条約のすべての締約国は、条約に基づく義務及びそれから派生する制度を遵守することに共通の利益をもっているとの豪州の主張を認め、同国の当事者適格を容認したからである。

 仮に訴えられた場合、日本としては、「沿岸国は、排他的経済水域における生物資源に関する自国の主権的権利又はその行使に係るいかなる紛争についても、同節の規定による解決のための手続(仲裁手続)に付することを受け入れる義務を負うものではない」との規定を使って、仲裁裁判の管轄権を否定して日本の正当性を主張することになろう。

 今回の日本の措置について国際協調や国際法遵守の立場を揺るがすものであるとの批判がある。たしかに、日本が行っているサンマやクロマグロ類の資源管理の交渉に影を落とすおそれや、鯨肉の消費が落ちている中で、商業捕鯨の再開といっても事業の継続性に疑問符がつく。

 日本はこれまで、近隣諸国との領土紛争はじめ一貫して国際法遵守の必要性を主張し、世界にその姿勢を示してきた。今回の件がきっかけで、こうした立場に誤解を生じさせないよう、政府は対応していく必要がある。そしてより大きな国益を追求する上での国際法戦略が今後も求められる。

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