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2020年1月24日

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CESに搭乗したイヴァンカ氏(REUTERS/AFLO)

 今年のCESの基調演説の中で最も注目を集めた、と言っても過言ではないのがイヴァンカ・トランプ氏の登場だろう。現大統領の娘であり、大統領補佐官を務める人物が選挙イヤーに、しかも大統領への弾劾裁判が始まろうという直前にこうしたイベントで基調演説を行う、というのは中々興味深いことだった。

 演説のタイトルは「The Path To The Future Of Work」(将来の雇用への道筋)で、内容としてはトランプ大統領のキャンペーンの文言「Make America Great Again」(再び米国を偉大な国家へ)が雇用の面で成功を収めたことを強調する、というものだった。

 まずイヴァンカ氏は自らが政権で行ってきた役割を「規制を緩和し、企業がより多くの人材を雇用するよう奨励してきたこと」であるとし、その結果として今日「1億6000万人が何らかの形で働いており、これは米国史上で最大の雇用数」だとした。また昨年新たに雇用された人の実に73%が「サイドライン」、つまり学生や主婦など、これまで雇用市場に存在しなかった人々であることも伝えた。

 この理由としてイヴァンカ氏は「米経済が好調で、高賃金が保証され、企業も新たな雇用を促進しているため」と語った。しかし、米労働省の統計によると昨年末の時点で正規雇用の数は1億1800万人であり、同氏が主張するのは非正規、パート、季節労働などを全て合わせた数だということが分かる。また米国人の平均収入は4万7000ドルだが、年収1万5000ドル以下の層が10.5%も存在し、学歴による格差も激しい。

 高校を卒業していない人の平均年収は2万5000ドル、高校卒で3万5000ドル、短大卒で3万9000ドル、大卒で6万2000ドルとなる。一方で物価の上昇も大きく、「これまで労働市場にいなかった人々の参入」は、「生活が苦しいためにパートなどで稼がざるを得なくなった人々」の増加と捉えることも出来る。

 一方で、いわゆる「スキルド・ワーカー」つまり技術を持つ人々の不足は以前から指摘されてきた。特にシリコンバレーでは高学歴のインドや中国からの労働者輸入が進んでいる。CESの母体であるコンシューマー・テクノロジー・アソシエーションからも「我々の会員企業の5社に1社は人手不足に悩まされている」という指摘があった。失業率は以前より減少しているものの、失業者数は全米で650万人に上る。カリフォルニアなど地価の高い場所では中低所得者層がホームレスに陥る問題も残されている。

 このスキルド・ワーカー問題については、政府主導で各自治体に職業訓練を推進していることが挙げられた。例えばインディアナ州では主に女性を対象としたインターネットのコーディング教育が行われている。コーディング技術を持てば、学位がなくとも年収5万ドル程度の仕事に就くことができる。またイヴァンカ氏は「企業が自社のブルーカラー職員に対し、新たなテクノロジーを使いこなしより高度な職務を行う社員教育も必須」と語った。

 しかし、自動運転、ロボティクスなどのテクノロジーの導入により職を失う人も今後は出てくる。例えばトラックドライバー、工場の単純労働者。こうした人々にどう対処すべきなのか。イヴァンカ氏は「テクノロジーの進化は必ずこれまでになかった新たな雇用を生み出す。そのためにも政府、企業による職業訓練の充実は必要であり、一時的なテクノロジー進化による雇用の減少は周囲の努力により補える、とした。ただし具体的にどんな職業が生み出され、そのためにどのような訓練が必要かという具体的な内容は語られなかった。

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