大学ではなく職業訓練を
イヴァンカ氏が強調したのは、例えば企業が自社に必要なスキルを持つ労働者を育てるための専門学校の充実。これはGMなど一部企業が実施しているが、「米国の学生は大学に行くだけが雇用への道ではなく、職業に特化したスキルを身につけることで高賃金の職に就くことができる、という選択肢を持つべき」という点だ。
これからは学位が全てという社会ではなくなる、というが、これにはまず学生が若いうちに自分の将来の職業を選択する必要、また前述のような大卒の生涯賃金がそれ以下の層と比べて格段に高い、という米国の格差社会を根本的に変えていく必要があり、時間がかかるだろう。
また、イヴァンカ氏は「将来の履歴書」をアプリ化する案についても言及。卒業した高校、大学、スキルなどが政府によるアプリに登録され、履歴書を提出しなくても企業と求職者が共通の知識を始めから共有できる、というシステムだ。さらにこれを一歩進め、自分が住む郵便番号に自分が持つスキルを求める企業があるかどうかを検索することも可能になる、という。
もう一点、連邦政府は今年から全ての職員に対し、12週間の有給育児休暇を保証することを決定した。また子供に対する優遇税制を設置することで、平均で年に2000ドル程度の還元が受けられる、という。
この点に関しても、そもそも米国に公的保育所が存在しないため、私設の託児所あるいはベビーシッターなどで人々の負担が重い、ということが根本的な問題であり、バーニー・サンダース大統領候補が以前から訴える無償の公的保育所の設立で解決する問題ではあるのだが、共和党政府はこうした「大きな政府」政策には興味を示していない。
米国の雇用は今後ますます高まる、という主張の裏側で、大統領が選挙の拠点としたいわゆるラストベルト地帯の衰退は進んでいる。熱烈なトランプ支持者として知られるロバート・マレー氏の石炭会社マレー・エナジーが昨年倒産したことは大きなニュースとなった。ハイテク労働者育成教育の一方で、こうした取り残されていく産業へ今後どう対処していくのか、という話はなく、米国の格差社会を埋めるのはやはり困難そうだ、という印象が残った。
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