今年は東京五輪開催の年だが、CESの記者会見で五輪に際しての「チーム・パナソニック」イニシアチブを発表したパナソニック。マイケル・フェルプス、ケイティ・レディッキーらとチームを組み、様々な五輪へのPR活動を行う。中でも注目されたのはレディッキーとパートナーとなる「Dive into STEM」教育プログラムの展開だ。
STEMとは理系教育全般を指し、今後全米の5つの地域の中学校を中心に、パナソニックのデジタル技術を用い、理系教育の重要性についての啓蒙活動を行う。
STEM教育は今後のテクノロジーの発展のための基礎となる。米国ではIT企業の人手不足が深刻で、今後5G、コネクテッド、IoT、AR、VRなどの開発がますます盛んになる中で、早期に人材育成を行う必要性が叫ばれているが、今回のイニシアチブはまさにタイムリーで的を射たものと言える。
この他、プリンセス・クルーズと提携した、クルーズ船上での仮想エンタテインメントを提供する4Kプロジェクター、サスティナブルなモビリティとしてのeBike、ゲームソフト会社セガ・エンタープライズと提携した「マリオ&ソニックオリンピック・ゲームズ東京2020」、東京五輪に向けた国立競技場への巨大スクリーン、オーディオビジュアル機器の提供、コネクテッド・カーのデータプラットホームCIRRUSなど、盛り沢山な製品やサービスが紹介された。
こうした内容の中でも、米メディアからの注目度が最も高かったのが、同社が開発した世界初のハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)機能を持つウルトラ・ハイ・ディフィニション(UHD)バーチャルリアリティ(VR)アイグラスだ。
米国では一部地域ですでに実サービスが始まっており、日本でも今年春から始まる5G通信により、VRを使った様々なコンテンツの提供が盛んになる、と考えられている。例を挙げるならバーチャル・スポーツ観戦、バーチャル旅行体験など。この事態を予測し、パナソニックがより気軽に、これまでよりも驚きの体験が提供できるデバイスを、と開発したものだ。
特徴は、これまでのVR用ヘッドセットと異なり、本当に眼鏡のようにかけるだけでリアルな映像とサウンドが楽しめる、という点だ。VR用ヘッドセットというとゴーグルのような大きく重いものが中心で、耳の部分もヘッドフォーンのようなものでカバーされるため、頭の後ろからストラップで装着する必要がある。利用者にとってあまり快適なものとは言えなかった。
今回パナソニックはVRのディスプレイ・デバイスメーカーとして業界をリードするコピン社と共同で軽量小型のディスプレイ部分を開発、またオーディオサウンドはパナソニックのシグナル・プロセッシング技術を使い、リアルで迫力ある音声の再現を提供している。
何よりも注目されたのは、その重量。わずか150グラム程度で、これは現在VR用ヘッドセットとして最も売れているOculus社の製品と比べて3分の1以下である。それでいてマイクロOLEDチップを搭載しているため、高画質の映像視聴が可能だ。