あのフィスカーがついに帰ってきた。フィスカー・オートモティブと言えば、元アストン・マーチンのデザイナーだったヘンリク・フィスカー氏が2007年に立ち上げ、翌08年には早くも「カルマ」というラグジュアリースポーツEVを発表して話題になった企業だ。
09年には当時のオバマ政権が推進していた「アドバンスド・テクノロジー・ビークル・マニュファクチャリング・ローン・プログラム」というEV開発に向けた政府融資を、テスラを超える5億2870万ドルも受けたが、その後経営が破綻、フィスカー氏は同社を去り、13年には中国の万向集団傘下の企業にわずか1億4900万ドルで売却された。
その後、フィスカー氏が自分の名前を商標登録していたため同社はフィスカーを名乗ることが出来ずカルマ・オートモティブとして再出発、フィスカー氏も新たにフィスカー社というEV企業をロサンゼルスで立ち上げた。
正直に言うと「落魄」というイメージ
時代の寵児のような存在から一気に何もかも失ったフィスカー氏だが、口だけは達者でフィスカー社を立ち上げた後「1回の充電で1000キロ走れるEV用電池を開発した」「すぐに新しいEVを発表してカムバックする」などと語っていたが、CESという場でそのカムバックを果たした。公開した車は「オーシャン」だ。
1月7日にフィスカー氏自身がこのオーシャンの発表を行ったのだが、正直に言うと「落魄」というイメージは免れなかった。これまで新興EV企業がCESで、あるいはロサンゼルスオートショーでデビュー発表を行ってきたが、どれも非常に華やかな会場、練った演出など、一流メーカーに負けない内容だった。
しかしフィスカーはラスベガス・コンベンション・センター内にブースは設けたものの、他の企業と比べるとかなり見劣りのするもので、装飾らしい装飾もなく、良く言えば質素、悪く言えばしょぼい内容。しかも10時半からの発表というのに10時には車がそのまま置かれていて、発表直前に車に布をかけて隠す、というお粗末さだった。
演出もボロボロで、司会役の女性社員が「お待たせしました、今からフィスカーの発表を行います。ではヘンリク・フィスカー氏に登場していただきましょう」とアナウンスした途端、ブース内の社員から「まだ準備できていない」とダメ出しで5分ほど待ってやり直す、というハプニング。さらにヘンリク氏に呼びかけても本人が登場せず、布をはずしたらトランクから登場、という演出もすべりまくっていた。