食品会社として昨年初めてCESに参加した、植物由来の「肉」を製造するインポッシブル・フーズ社が、今年のCESで新しい製品の発表を行った。これまではハンバーガー用の人造牛肉が中心だったが、新たに「インポッシブル・ポーク」と「インポッシブル・ソーセージ」を加えた。
製品の発表と記者会見はマンダレイベイホテルの日本食レストランを貸し切って行われ、発表前にインポッシブル・ポークを使った様々な料理が提供された。シュウマイの調理実演、「トンカツ」、ポークバン、サンドイッチ、焼きそばなど、ハンバーガーが中心だったこれまでと比べて一気に料理の幅が広がった。
同社CEO、パット・ブラウン氏は「米国で最も食べられている肉は牛肉、次いで鶏肉だが、世界的に見れば最も食べられている肉は豚肉であり、グローバル市場を見据えたときにポークを作り出すことが大切だと思った」と新製品開発の理由を語った。
人造の豚肉の強みは、イスラム圏など豚肉を忌避する地域にも植物由来ということで食べてもらえる「肉」を提供できる点にある。さらに東南アジアを中心としたエスニック料理に豚肉は欠かせない存在であり、今回提供されたシュウマイの他、餃子や豚肉を使ったあんかけなど、様々な料理が提供できることになる。
昨年は同社のライバルであるビヨンド・ミート社が株式上場を果たし成功を収めるなど、人造肉に対する関心は高まっている。今回の会見の試食ではインポッシブル・ソーセージは提供されなかったが、1月後半から米国の139箇所のバーガーキングで朝食サンドイッチにソーセージが提供される予定だ。
1万7000件ものレストランで採用
インポッシブル・フーズの製品は現在米国と香港を中心に1万7000件ものレストランで採用されており、今後も中国を中心にグローバルな販売を展開する、という。中国サイドの関心も高く、会場では「いつからポークを中国で販売するのか、価格は今より下がるのか」という質問が出るなど、期待の高さが伺われた。
試食の感想だが、非常にポークらしい風味が出ていたことにまず驚かされた。インポッシブル・フーズのビーフバーガーは以前に食べたことがあるが、食感、味ともにやはり偽物、という印象が強かった。不味いわけではないが、肉というより豆料理の風味がした。
しかし今回のポークは、食感がしっかりとしていて、特に「トンカツ」として提供されたものは噛みごたえがあり、豚肉独特の風味が感じられた。シュウマイはソースの味が強くてなんとも言えないものだったが、ひき肉の焼きそばのような料理は料理としての完成度が高かったこともあり、十分に美味しいと思えるものだった。
開発担当である生物化学博士、セレスト・ホルツ=シーティンガーさんに話を聞いたが、やはり開発面で最大のチャレンジだったのは「牛肉とは違う、しっかりとした豚肉の肉質、ジューシーな風味をいかに再現するか」という点だった、という。